第139話
投稿遅れました。本当に申し訳ない。言い訳にもならないが課題と小説のデータ紛失が重なった挙句風邪を引いてしまった。
そして安定のクソ文章と展開...もう今回はお茶濁し回ってことで許して。
ではどーぞ
――――――――――――――――――
「久しぶりだな、皆」
「...生きてたんだな」
どういう事だ、と硬直する隊員達。ガルもまた状況を理解出来ていない人間の一人だったが、なんとかそれから抜け出し絞る様に声を出した。
「あぁ、生きてるさ」
「色々と言いたい事も聞きたい事もあるが...まぁ今は無事に帰って来た事を喜ぶ事にしよう。お帰り、隊長」
「あぁ、ただいま」
ライトはそう言うと一度言葉を切った。そして上を向く。それは逝ってしまった隊員への謝罪か、はたまた今生きている隊員への罪悪感故か。
「まずは、謝罪させてくれ。本当に、本当に済まなかった...っ!そして...厚かましい事は分かっている。そしてその上で聞かせてくれ。大罪人である俺を、お前らは再び隊長として認めてくれるかと...!」
深く、深く頭を下げるライト。そこには何の他意もなく、ただ謝意のみが込められていた。
彼にとって、隊との最後の別れは碌な物ではなかった。レオという信頼が厚い隊員を斬り殺し、彼らの流血によって為された停戦を無為にするかの如く王国民を虐殺してしまった。それが、彼らとの最後の記憶である。
であるからして、まずは謝罪せねばらならない。
俺のせいで多くの隊員を死に至らしめた事を、多大な迷惑を掛けてしまった事を。
そして問わねばならない。俺にはまだ隊長としての資格を持ち合わせているのかと、それを認めてくれるのかと。
必ず、俺には彼らの力が必要になる。サラへの恩義を元に作られたこの隊こそ、サラを守る為に最も必要な物だ。
だがそんな合理的な理由ではなく、俺は彼らに謝罪したかった、彼らの仲間で居たかった。苦難を共にした、掛け替えのない仲間と。
そう万感の思いを込めた言葉は、しかしガルにはしっかりと届いたようだった。
「まだ状況が掴めねぇけどよ。俺はこう呼んだ筈だぜ、『隊長』ってな」
「...良いのか」
「それによ、隊長。アンタは一つ忘れてるぜ」
ガルはそう言うと不敵な、何処か軽薄さを滲み出すような笑みを浮かべた。それがまるでかつてのようで、不意に懐かしさに襲われる。
「大罪人である俺を、だと?俺たちゃ元から罪人だろうよ」
ガルは手を出した。握手ではない。そんな上品な物ではなく、まるで腕相撲でもするかのように手を大きく広げた。
「―――――なんせここは、懲罰部隊なんだぜ」
「...はっ、敵わねぇなぁ」
何処か諦めたように、それ以上の喜色をその顔に浮かべながらガルの手を取る。
――パチン、と乾いた音がした。
俺とガルが、その手でハイタッチを交わした音がした。
そうするとガルは満足気に笑みを浮かべ、その視線をライトの後方へ向ける。
「サラも生きてて本当に安心した...だがまぁ、今は姉ちゃんのとこ行ってやりな。随分と心配してたようだしよ」
「うん。みんなもごめんね、心配を掛けちゃって」
安堵の涙と笑みを浮かべそう言うサラ。
彼女は隊が隊足りうる理由だ。そんなサラの笑顔が見られて、隊員も皆気が抜けた様に息を吐く。
「あ~、本当に良かった...隊長なんかはどうでも良いけどね、やっぱりサラの事は気が気でならなかったんだよ!」
「おい」
「うるせぇ、勝手に抜けた挙句我らの姫様を命の危機に晒した野郎なんか知るか」
そう辛辣な言葉を吐いたのはリアムだった。
彼とは未だ解けぬ確執がある。しかし、それを気にするでもなく無理やり呑み込むでもなく、ただ思いの丈をぶつけてくれるのはきっと喜ばしい事だ。
「お前もサラと一緒に第一王女のとこ行けよ。色々伝えなきゃいけない事あるだろ?」
そう言われて気付いた。確かにここ最近は目まぐるしすぎる情勢の変化があったのだ。新聖第二帝国の建国、それに伴う冒険者ギルドの発足、魔術王の死、そしてスタンピード。
こう考えるとあんまりにも色々あり過ぎな気がする。だが、故に最高指揮官である第一王女に伝えなければならないだろう。
「じゃあ行ってくる」
「先に始めてるぜ。とっとと終わらせて帰って来いよ」
...あぁ、相変わらずだな。
何を、と問うまでもない。
アイツらと酒を呑むのは何時ぶりだろうか、と心を躍らせながら俺は第一王女が居るらしい方向へと歩き出した。
〇
「それでよぉ!ガルの奴『げっ』とか言いやがってよぉ!」
「ヴァルター何て言ったと思う?『貴様がそこに居るのは不敬罪が原因ではあるまいか?』だとよ!傑作だよなぁ!」
「...はは」
気の抜けたような笑い声を溢しながら、ライトは感慨に耽っていた。
懐かしい。只ひたすらに懐かしいのだ。
火を囲んで集まる皆も、くだらない事で笑い続ける隊員も、自棄酒なんかでは得られないこの酔いも。
だが、だからこそ目についてしまう。
多過ぎる空席、そしてそこに突き刺された銀の短剣が。
「悩みか」
厳つめの、如何にも職人の様な声だった。
その声に聞き覚えはあったが、実際耳にしたのは随分と昔の事だ。
「ゲイジか。お前が口を開くのは何時ぶりだろうな」
熊の様な、という表現が最も合いそうな大男。それがゲイジである。
寡黙である事、何らかの職人であった事、それが彼について俺が知る情報である。
もうこれだけしかいない隊員の事すら、俺はあまり知っていなかったのだ。
「いや、悩みではない...単なる罪悪感の様な物か」
「そうだな、そんなもんだよ」
ゲイジは酒を呷りながら話を続ける。こんなにも話すコイツの姿はこれで初めてだった。まぁそんな感想はさて置き、今ゲイジが言った事について考える。
「...いや、案外そうでもないかもな。俺は悲しいんだよ。この短剣の数が俺のせいであろうとなかろうと、悲しみを感じてしまうのは当たり前の事だ。何せかけがえのない仲間だからな」
陽気で喧しかったあの隊員。いつも眠たげだったあの隊員。挙動不審なあの隊員。皆、死んでしまった、居なくなってしまった。
そこに対して抱くのは、やはり罪悪感ではなく悲しみであった。
「分かっているなら言い。もし俺が仕事でヘマをして死に、誰かがそれに対して罪悪感を抱いた時...そうだな、ぶん殴ってやりたくなるからな」
隊で最も酒に強い事でも有名なコイツも、珍しく酔っているのだろうか。饒舌に話すゲイジを前に、そんな事を思った。
ゲイジが言った事について考える。あぁ、確かにそうだ。みんな命を掛けて、全力で戦ったハズだ。それを他人が『俺のせいだ』と言うのは、どれ程傲慢な事か。
アイツらは自分で決めたのだ。
戦場と言う名の地獄に身を投げる事を、そこで戦い抜く事を。
であるからして、俺は彼らに対して罪悪感を抱くのは間違っているのだろう。
「おっゲイジじゃん。珍しいな、アンタがこの場で喋ってんの」
「ガルか。あぁそうだな、監獄島以来じゃないか?」
顔を真っ赤にしたガルがフラフラと近寄って来た。
どうやらもう随分と出来上がっているらしい。
「にしても、姫さん遅ぇなあ」
「しょうがないだろ、久しぶりの再会なんだから。姉妹水入らずだよ」
とは言えもうすっかりと遅い時間だ。
第一王女に経緯やら情勢の変化やらを伝えるのにかなりの時間を取られてしまったし、そうでなくとももう長い時間飲んでいるのだから。
辺りを見渡す。
半数近くの隊員はもう雑魚寝を始めていたようだった。
「...にしても、これからどうなるんだろうな」
俺も酔いが回っているのだろう、不意にそんな言葉が口をついた。
正常に働かない脳味噌で思考する。一体、俺達を待つ未来はどんなものなのか、世界はこれからどうなっていくのか。
王国は三日天下となり、今や世界は風雲急を告げる状況だ。
もうそんな事を予測出来る人間はこの世にはいないのかもしれない。
とは言え、エルはその例に漏れるだろうが。
「さぁな。だが禄でもないって事は何となく分かるぜ」
「全くだ」
それについては全くの同意である。
どんな状況も、エルならばいくらでも悪用出来るだろう。合衆王国へ辿り着いたとしても、その先に何が待つのかなど予想だに出来ない事だ。
そう物思いに耽ながら酒瓶を傾ける。
「...おっ、帰って来たみたいだぜ」
ガルがそう言葉を放った。彼の視線を辿ると、そこには確かに炎の光を反射して輝く金色が、サラが居た。
「ごめんね、遅くなっちゃった」
てへ。と、そんな擬音が付きそうな表情をしながらサラがそう言った。
滅茶苦茶酔っ払った、或いは潰れかけの隊員らが口を開く。
「おー、ひめさん!ひェっく...どこ行ってたんだー?」
「もう、飲みすぎだよみんな。お姉ちゃんの所行ってくるって言ったでしょ?」
呆れをその端正な顔に浮かべたサラがそう答えた。
まぁみんなも今日くらいは沢山飲みたいのだろう、とライトは何処か達観している。何せ、これから先にこんなにのほほんと酒を飲める機会なんてあるか分からないのだから。
...本当に、次にこんな風に酒を飲めるのは何時になる事やら。
そう溜息をつきながら、ライトは再び酒瓶を傾けるのだった。
――――――――――――――
分かってる。今回のはとびっきりのクソだった。正直このままだとPVがめっちゃ落ちるだろうから予告。
次回、遂に終わった戦争、そして追放される懲罰部部隊!
ではまた
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