第25話
ルマリーザが魔王軍に所属していた時の情報である。
まず魔王について、名前はグラウバラド。圧倒的な強さを持ち、魔物達を率いているという。
そのグラウバラドに心酔し使えている幹部が、ルマリーザを除き3名いたという。
それぞれ、アスピリ、スウェル、ドナテロというらしい。
その幹部達に先日戦ったアロンのような魔王軍の隊長が数名仕えているとのこと。
そして魔王軍の本拠地、ベイルじいさんが言っていた北の山はハイルザナトというらしい。
「これが私の持っている情報だ。ただ、私がいた時とは魔王軍も大きく変わっていると予想する。」
「ふーむ。なるほどね。意外としっかりしているもんだな。まるでマフィアだな。」
「マフィア? 」
「俺らがいた世界であくどいことをして稼いでいた組織のことだ。」
「なるほどな。」
「これだけ聞いても一筋縄ではいかなそうですね。」
「やはり王都軍との協力は必要だな。」
「うし、じゃあ早いとここの坑道抜けて、王都に急ごうぜ。」
一行は休憩所を後にし、坑道を進んだ。
しばらく歩いていると行動の出口が見えてきた。
外へ出るともう辺りが暗く見通しが悪くなっていた。
今日は行動を抜けたところで、野宿することにした。
ティナとルマリーザが食事の準備をしている間、3人はテントの中で話していた。
「なあ、なにか思い出したか? 」
「まったくです。大和さんは? 」
「同じくだ。」
「本当にそのうち思い出すんかね? 」
「うーん。わかりませんね。」
「悩んでいてもしょうがない。今はニアのことを信じて魔王を倒す他ない。」
「まあそーだな。」
「ええ。」
「皆さん、食事できましたよーっ! 」
ティナが香ばしい匂いと共に3人を呼びに来た。
一行は食事を済ませ、明日の出発に備えてテントへと戻った。
「ルマリーザさんっ。あの時の相談の事なんですけど…。」
「ああ、覚えているよ。魔法を教えてほしいんだったね。」
あの時というのは、アロンを対した後の宴の前まで遡る。
「ルマリーザさんっ。私に魔法を教えてくださいっ! 」
「魔法? 回復魔法ならもう立派に使えるじゃないか。」
「いえ、そうではなく攻撃魔法を覚えたいんですっ。」
「攻撃魔法? 一体なぜなんだい?」
「私、3人の足を引っ張っているんじゃないかと思って。もちろんあの人たちはそんなこと言いません。とても強いですし、回復を頼りにしているとも言ってくれました。それに甘えている私もいて。でもっこのままじゃいけないと思うんですっ。あの人たちと同じレベルとまでは言いません。でも少しぐらいは私も戦闘で役に立ちたいんですっ! 」
「なるほどな…。わかった。教えよう。でもねティナ。必ず覚えられるわけではないよ? 」
「魔法適正…ですよね? 」
「ああ、適性ってのは生まれ持って備わっているものと、魔法の修行をして身に付けられるものがある。前者は自然に身についているものだが、後者はとても厳しい。それでもやるかい? 」
「…。やりますっ。やらせてくださいっ! 」
「わかった。ただしやるからには厳しくいくよ? 」
「はいっ! ありがとうございますっ! あっ後できれば…。」
「ああ、3人には黙っておくよ。」
ティナとルマリーザは魔法修行の約束をしていたのである。
そしてティナは二人になった時に魔法の基本から、ルマリーザに教わっていた。
「よし、じゃあ3人の目を盗んで少し森のほうへ行こうか。」
「はいっ! 」
二人は隙を見てテントから少し離れた場所へと移動した。
そして修業を始めた。
修行の内容はとにかく属性をイメージし、発動させるところから始まった。
色々な属性をイメージしての繰り返しである。
「うーん。なかなか出ません…。」
「そりゃそうさ。そんな簡単にはいかないさ。」
「はいぃ…。」
「そういえば、ティナには姉がいたと聞いたが、姉はどんな魔法を使えたんだ? 」
「お姉ちゃんですか? お姉ちゃんは火と水の属性を使えていました。おじいさまがいうには、お父さんの血が色濃く出たとのことです。私の場合、回復の適性はお母さん譲りみたいです。」
「ふむ。なるほどな。もしかしたらその二つは身につくかもしれない。火と水、それを重点的にイメージを繰り返していこう。」
「はいっ。」
しばらくティナは集中してイメージを繰り返し続けた。
しかし、なかなかうまくいかない。
「ティナ、まだ初日だし今日はこれぐらいにしておこう。テントに戻るよ。」
「あと少しだけっ。お願いしますっ」
「ティナ、焦ることはないさ。直ぐにできるものでも…。」
その時ティナの指先からほんの少しの火が出た。
「あっ…!? ルマリーザさんっ。火出ました火! 」
「これは…。まったく君たちにはいつも驚かされるね。すごいよティナ。」
「やったやったー! 」
「一歩前進だね。よし今日は休むとしよう。ティナ。」
「そうですねっ。」
二人はテントに戻り、翌日に備えて休んだ。
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