2-6
フレックの特異体質は魔力を吸収し無属性化、そのまま自然界へ還す、その効果を他者へ付与する、だった。
そしてフレックはそれしか出来なかった。
他には何も、何もかもが平凡以下。
まるでヘリオスフィアを生かすだけに生まれた存在だな、とフレックは思った。
けれどフレックはヘリオスフィアが大好きだから、気にしなかった。
気にしないようにし続けた。
体が大きくなってヘリオスフィアがどんどん優秀になって、差が生まれて、気持ちが離れていっても、フレックは平気なふりをし続けた。
予感があった。
きっといつか自分はヘリオスフィアに捨てられる。
使い捨ての魔石のように、捨てられる。
それでもいいって、思った。
だってヘリオスフィアに幸せになって欲しいから。
だから捨てやすいような人間を演じた。
無理して肥満体系になった。
嫌だけど傍若無人に振舞った。
ヘリオスフィアにお願いを言い続けた。
影でブタックて呼ばれても、悪口を言われても、家族に注意されても、悪童を演じ続けた。
目の前に居るヘリオスフィアが婚約を破棄するって言っている。
隣に綺麗な女性が居る。
フレックはお似合いのふたりだと感じた。
まさしく理想の、ヘリオスフィアの、幸せだ、と。
身に覚えは無いがどうやら自分はそんなふたりが恋人になるのを嫌がって、彼女に嫌がらせをしていたようだ。
彼女は聖女で、聖女は国の重要人物で、重要人物に対する悪質な行為は赦されない。
だから東部魔境戦線へ追放される、と。
フレックはとっても良い結末だなって思った。
嫌がらせは本当に身に覚えは無いけど、悪いことをしてしまった罰は受けるべきだし、東部魔境戦線への追放なら家族に泥を塗らずに済むし、なにより、ヘリオスフィアの視界からちゃんと消えることが出来る。
フレックは自然と微笑めた。
ちゃんとお別れを言わないと。
もう忘れて貰わないと。
きっと聖女様ならヘリオスフィアの特異体質も治してくれるだろう。
『君がそうだと言うのなら僕は従うよ。君が僕を愛してないのは、もうずっと前から受け入れていたから大丈夫だよ。だから、もう、独りで凍えないでね』
ちゃんと言えた。
はじめましてのご挨拶がちゃんと言えた時のことを思い出した。
急に、ふたりが見えなくなっていく。
白くなって輝いて、それが一瞬見えた。
我が子を抱く、笑顔。
ああ、幸福、そう。
もうヘリオスフィアの空色の瞳、見れなくなるのだと思ったら悲しかったけど。
フレックは、その幸せが続きますようにと。
祈った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。