日常
翌日。カノンにさんざん心配され、チャットツール(レイン)で眠るまであれこれ根掘り葉掘り聞かれて、話し相手になり続けたクレンは疲れ果て、教室の机につっぷしていた。カノンは別クラスだったからまだよかったが、今朝早く昨日の事をまた細かくきかれ、かと思いきや例の野良犬の相談を持ち掛けられた。今は、動物愛護所にひきとられ、一時預かりされている。愛護所では近年の国の取り組みにより殺処分はされないようだがカノンは犬の事を心配しているというので、今日の学校が終わり次第様子を見に行くことにした。カノンは
「完全には払えれていない、俺が払ったんじゃなくて、一時的に憑き物を封じただけだから、おやじに連絡しよう……」
そういうと心配そうな顔をしながらも少し安心して
「うん……」
とつぶやいた。
「ふう……」
やっとおちついた。と思ったのもつかの間。今度はセイヤが朝からいろいろと聞いてくることになった。
「昨日、お前と親父さんが犯人を捕まえてでてきたとき、歓声があがっただろ、あれはすごかったぜ、伝説になる」
「ああ、まあ確かに……」
確かに警察がとりかこみ、これから犯人と、交渉なり最悪の場合突入などという段取りを整えている間に、高校生の息子が侵入し犯人をやっつけ、人質だった父を解放して犯人を捕まえてでてくるのだから、珍妙な話だ。たしかに今朝の地元新聞でニュースになったというが、別に有名になりたくてやったことではない。
「昨日は何も聞けなくてさ、お前に悪いとおもって、だけどやっぱりお前がなんかしたんだろう?犯人に“聖なる力”をつかったのか?」
「“聖なる力”って……退魔の陽の気というんだよ、わかりやすくいえばね……」
「やっぱりお前がやったのか、お前ってやっぱすごいぜ、こんなにブランクがあっても、あんなことやってのけるなんて」
「あんなこと?」
「あのあとお前たちの様子をみたり片付けの手助けをしたときにみたぞ、家のガラスが割れたり、キッチンがちらかったり」
「ああ……そうか、お前しらないのか」
「何がだよ」
といってセイヤは腕組みをして、少しむすっとした顏をした。
「いや……」
クレンがつくえにつっぷし腕をまくらにして、目線をやったその先。そこには、廊下、教室の窓の外からこちらに恥ずかしそうに手を振るクノハがいた。
「ふっ……」
「おい、なんだよお前、美少女でもみたのか?」
「いや……お前には正直にいうか」
「?」
「クノハだよ、クノハが力をかしてくれた、俺は力を制御できなかったが、クノハが自身の力を使い、そして俺の力もかりて、男についてた憑き物……結果的には人間の悪霊、を払ったんだ」
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