不思議なお茶会と破滅の弾丸㉑

監査のようなものを終えて、和樹は東支部へと戻って行った。


「あ、遥日さんから俺と結紀でアリスの学校まで来いってさ」


「了解〜」


放課後、力からそう伝えられて結紀は頷く。


アリスの学校とは瑠奈の通っている所だろうか。


結紀は瑠奈の通う学校までは知らないが、どこに向かえばいいのだろうかと首を傾げた。


「ティキって、知ってるか?」


力は結紀の疑問には答える気がないようで、全く違う話を繰り出してきた。


「知らない」


力について目的地まで歩きながら、ティキという言葉を思い出す。


この間遭遇した時、瑠奈もそんなことを言っていたような気がする。


「今の女子高生に人気のバンドだってよ」


「それが何?」


「ティキのライブに行ったやつのアリス発症率が高いって情報が最近流れてる」


ライブのバンドに行っただけで発症と首を捻る。


「唸ってるとこ悪いけど、よくわかんねーんだよな。とにかく、そいつらの話をしておけば大体の女子からは情報が引き出せると思うぜ」


「……なんで?」


「男性ファンは珍しいんだとよ。だから、詳しければ詳しいほど信頼を得られる。それだけ調べるってことは大体ファンだからな」


力の言っていることは何となく理解した。


つまり、仲間だと思わせる。


そういうことだろう。


「遥日さんなら、あの顔面で何とかしてくれそうだけどな」


「顔面って、リッキー……」


可哀想なものを見る目で力のことを見つめていると、力が慌てて振り返る。


「いや! 俺の言葉じゃないからな!?」


「それは無理があると思うよ」


「ほんとに! 支部長の言葉だからな!? うつっちまっただけで」


支部長と言われて茜のことを考えてみる。


茜が言わないとは言えないのが、そういうことなのだろうと思わせてくる。


「現地に着くまでに、ティキのこと調べとけよ。俺たちは、本当にアリス発症率が高いのかも含めてな」


とりあえず頷いておいて、現地はどこなのか不安に思っていると、力は話を続けた。


「遥日さんがそのうちティキのことは調べるって言ってたから、お前も行くことになるかもな」


調べておいて損はないと言いたいのだろうが、逆に興味を失ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る