不思議なお茶会と破滅の弾丸⑮

 力と合流すると遅かっただのなんだのと散々言われて、卯宝のことを話す。


「そーか、卯宝が……。あいつまだ遥日さんのこと探ってんだな」


「まだ?」


 街頭に蛾が集っている音がする。


 思わず耳を塞ぎたくなるが、力の言葉を聴き逃したくないと耐えることにした。


「遥日さんがいつどうして能力に目覚めたのかが気になってんだよ。

 だから、お前のことも定期的に探りに来るかもな」


「えーー……」


 そうなったら面倒くさいとそう漏らせば、力は笑った。


「そんなことより、アリスのことちゃんとどうにかできそうか?」


「わかんないけど、何とかするよ」


「結紀ならそう言うと思ったぜ」


 自信満々にそう言った力は、こちらを振り返る。


 なんの用かと見ていると、なぜだか突然ぶつかられた。


 突然の行動が思ったより痛かったので、結紀もどつきかえした。


 数秒そうして遊んでから、力の家へ向かうために歩き始める。


 どうやら、力は機嫌がいいようなので今なら透とのことも聞けそうだと思い、問いかけてみる。


「うさぎは、仕事の価値観が根本的に合わない。だから仕方ない」


「仕方ないって、それでいいの?」


「いいんだよ、それで。俺達はそれで正解」


 あー変なこと言ったと言いながら駆け出していく力を追いかける。


 詳しくは教えてくれなかったが、力は透に対して思うことが色々あるようだ。


 どうにか仲良くして欲しいと思うのは、結紀の勝手だろうか。


 結紀にとっての友達は力と透ぐらいしか居ない。


 二人がもっと仲良くなってくれれば、出かける時に喧嘩などしなくなると思うのだ。


 この二人はいがみ合いながらも遊びに行ったり、シミュレーションを一緒に攻略していたりする。


 結紀もその中に入りたいとは思うが、突然始まる喧嘩にはついていけなかった。


「リッキーは中央に行きたいの?」


「中央? なんで?」


 自販機の前で立ち止まった力にそう問いかける。


 思ったより走ったので息が上がっていた。


「憧れてるって聞いた」


「あ、出世のこと? そりゃ出世はしたいけど、中央じゃなくてもいいな」


 自販機からガコンと音が鳴り缶ジュースを手に取った力はゆっくり顔を上げた。


「お前息上がりすぎ!」


「リッキーちゃんと答えて」


 話をすり替えようとした力に対してそう声を掛ける。


 力は悩む素振りを見せたあと、結紀に缶ジュースを投げてきた。


 それを受け取って結紀は力の言葉を待つ。


「中央に所属したいって意味じゃねーよ。ただ、中央でやりたいことがあるだけで」


「やりたいこと?」


 ジジジ、となっていた街灯のが静かになる。急に辺りな闇が深まったような気がした。


「また、いつかな」


 新しい缶ジュースが自販機から降りてくる音がする。


 結紀は力から貰った缶ジュースの蓋を開ける。


 すると、缶ジュースの中身が勢いよく飛び出て来て結紀は頭からびちょ濡れになってしまった。


「リッキー……」


「あ、すまん。炭酸だった」


 そう言って笑った力はどう見ても確信犯だ。


 自分で選んで買った缶ジュースの中身を知らないことはないだろう。


「許さないから……」


 炭酸のせいで脱力したままそう返すと、力は何度も謝ってくれていた。


 しかし、それだけで収まると思うなこの怒り。

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