バ美肉を騙る女の子と女子高校生を騙る男の子。

宮鳥雨

プロローグ ―― その日世界は明るくなった

『今日もゲームをやっていくよー!』


 その日、僕の世界は明るくなった。両親を亡くして引き籠もっていた僕に光を与えてくれた存在。


『また、負けた〜、やっぱりこれ運ゲー過ぎるって』


 画面には楽しくゲームをする女の子の姿が写っていた。そして、それを見守る5万人以上のリスナーたち。


『ねえ、もう一回だけやっていい?』


 無様な姿を晒しながらも楽しくゲームを続ける少女と、下手だと馬鹿にしながらもどこか温かみのあるコメントの数々。


 その場所は僕にはあまりにも眩しすぎた。彼女の住む世界はあまりにも自分とかけ離れている。それなのにどうしてだろうか、その場所へ自分も行きたいという気持ちが込み上げてくる。


『じゃあこれにて、今日の配信はお終い。バ美肉ばびにくVTuber久佐野 月ひさの つきをよろしくね~』


 配信が終わると同時に僕は部屋を飛び出した。こんな生き生きした気持ちで部屋を出るのは何か月ぶりだろう。


「姉さん!」


 パソコンに向かって仕事をしていた姉さんであったが、僕の顔を見るなり優しい顔で迎え入れてくれた。


「姉さん、僕VTuberになりたい」

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2024年11月29日 06:01

バ美肉を騙る女の子と女子高校生を騙る男の子。 宮鳥雨 @miyatoriame

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