第2話 卒業アルバム
大学の研究室で卒業アルバムの写真撮影の時に、資料として数年前の先輩たちの卒業アルバムを拝見した。
当たり前だが、そこには数年前の先輩たちが載っていて、背景には私が毎日見ている校舎や学校設備が写っている。
各学科の個人撮影の欄には、カメラマンによって人工的に作られた笑顔が少しぎこちない人や、微笑んだ顔が少し照れくさそうになっている人が写っていて、アルバム用に撮影したというのがひと目でわかる。
少しページをめくると、次は普段の学校生活や学校行事の写真が載っていた。そこに写っているのは先ほどのアルバム用の作り笑顔とは違い、日常生活にでる自然な笑顔だった。それを見ると、彼らは私が通っているこの大学に確かにいて、この大学でのひと時を彼らの人生の一部として、ここでの生活を十分に謳歌していたということを感じた。
私自身に実感はないが、今の自分は、数年後に大学生活を謳歌していたといわれるであろう状態の中にいる。授業がめんどくさいと思いながらも毎日通い、朝早く起きるのが辛いと思いながら通学し、嫌な先生の愚痴を友達と語り合い、恋人ができたら祝福し、失恋したら慰め合った。そんな4年間の大学生活は私の人生の一部となり、卒業して少し時間が経った頃には思い出としてきれいに保存されているだろう。
4年間過ごしたこの場所には、顔も知らない先輩の思い出がたくさん詰まっていて、これから顔の知らない後輩の思い出も詰まっていく。入学、卒業を繰り返してこの大学で過ごした時間が一人一人の人生の一部になっていくのを考えるととても感慨深い。
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