第二百四十六話 夢の終わりと繋がっていく点というもの
「この魔力……! 撤退するぞカイン、ソリオ!」
本気で行くと告げたコトルクスの異常に最初気づいたのはゼオラだった。
すぐにコトルクスに魔法を放ちながら撤退の指示を出す。
【逃がすと思うか小娘……! 貴様の魔力を吸収して私はさらに強くなる!】
「……!?」
「うお……!?」
コトルクスが次に言葉を発した時、体は金色と化して全身に雷をまとっていた。
ソリオさんの剣が触れると鈍い音を立てて火花を散らす。
【そこでじっとしていろ! 娘たちの後にゆっくり食らってやるわ!】
「狙いは私達……! <ホーリーウォール>!
コトルクスは感電したソリオさんを無視してこちらへ迫ってくる。
飛ばしてくる雷撃をディーネさんが防御魔法で防ごうとするも、先ほどまでとまるで威力が違うようでひびが入る。
「<フレア>!」
【効かん!】
「チィ!」
「<ミズデッポウ>だ!」
ゼオラのフレアをかき消してなお突き進んでくる。僕も魔法を放ち牽制する。
「ゼオラ、オーヴァーレイは!」
「あれは詠唱が絶対に必要だ。だけど集中している暇はねえ……!」
【さあ、覚悟しろ……!!】
【うぬ……! ウルカ、降りるのだ!】
「ボルカノ!?」
いよいよ眼前に迫ったコトルクス。そこでボルカノが僕を振り落とした。
急にどうしたんだと思ったけど、ボルカノはそのままコトルクスへ突撃していた!
【うおおおお!】
【なに!? 馬鹿な、この身体に触れたらいかなフレイムドラゴンといえど火傷では済まんのだぞ!?】
【それでも、お前を倒すのに躊躇はない。我の同胞も貴様にやられているわけだしな】
【同じドラゴン……強い者が弱い者を倒して食う、そういうものだろう! ……がっ!?】
体当たりを仕掛けたボルカノはそのままコトルクスへと嚙みついた。今度は葉が通った……!
【思った通り、その姿は攻撃に特化した形態だな。雷撃で近寄らせないようにし、魔法を弾く。だが、肉体そのものは脆くなる】
【……】
「そういうことか……なら、この剣でも、やれそうだな……」
無言は肯定と受け取ったのか、カインさんがゆらりと立ち上がって剣を構えた。
その時、ディーネさんが叫んだ。
「カインさん! 剣では雷にやられてしまいます! せめて補助魔法を――」
「その暇はなさそうだ……! ボルカノさん背中を借ります!」
【応!】
これは……決戦だ。
ボルカノもコトルクスを探していたような素振りがあった。このドラゴンは本当にまずい存在――
「……!」
そこで僕はとある場所に目がいき、ハッとする。これが、この瞬間が『暇』になったのかと。そして僕も詠唱を始める。
「『閃光の輝きよ――」
【……!? 貴様! ええい、離せ!】
【ぐが!? に、人間!】
「わかっている……!」
【ぎゃあ!?】
ボルカノの背を駆け抜けてジャンプしたカインさんは雷撃を突き抜けて見事、眉間に剣を差した。血しぶきが舞い、このままオーヴァーレイで吹き飛ばす。
だが……!
【食えば傷などいくらでも回復する……!】
「……!」
コトルクスは這いずるように舞い、ゼオラに大口を開けて迫った。ホーリーウォールが寸前で止めたもののすぐにかき消えてしまう。
「『眼前の敵を――』」
【間に合うものか……!!】
『間に合わせる!』
「え!? 誰!」
急に知らない声が聞こえて来て、次の瞬間ゼオラを突き飛ばしてコトルクスの前に立ちはだかった。
『ああああああ!?』
【魔人か……!? おのれ、邪魔をしおって!】
『わたしのことは……いい……撃て……』
【……貴様!? うぐお!?】
「俺の剣が刺さっていることを……忘れていたか……くっ……」
いきなり現れたお姉さんはコトルクスに胴体を噛みつかれ血を流す。そして自分ごと撃てと言い放つ。
カインさんは限界が来たのか剣をぐりっと回してから地面を落ちた。
だけど、それで勝負はついた。
「『討ち亡ぼせ――』」
「『討ち亡ぼせ!』」
【な――】
「「<オーヴァーレイ>!!」」
僕の放った魔法はビームのようなものだった。それでも以前撃った時よりも太い。
それがコトルクスの喉を側面から貫通した。
そしてゼオラの放った魔法はロボット物の粒子砲みたいな太さでコトルクスの全身を包むようにヒットした。
『……これで、ようやく終わ、る……』
「お姉さん……!? うぐ……!? あ、頭が……!?」
「わんわん!?」
牙に咥えられたままなので謎のお姉さんは一緒に光に飲み込まれた。
あの最後に見えた顔、どこかで見たような――
【うおお……馬鹿な……!? こ、このままでは消えてしまう……身体を分けて逃れなければ!?】
「往生際が悪いぜ……! 師匠、使わせてもらうぜ……」
「あの石は……!」
光が消え、全身がボロボロになったコトルクスが地面に横たわりぴくぴくと身体を動かしていた。お姉さんは……消えていた。魔法で消滅した、のだろう……
そしてゼオラが肩で息をしながら取り出した石は、あの池の底に沈んでいたものと同じだった。
「これを食らえばお前とて消滅する……! 『すべてを無に帰すは理を覆えせし禁断の魔技。どこにでもない場所へ還れ』……滅魔法……<カタストルフ>」
【それは古代の……馬鹿な……ただの人間が……だ、だが、私は死なん……必ずいつの日か――】
石にあたったカタストルフという魔法が分散し、コトルクスへと突き刺さる。当たった個所は最初からそこにはなにも無かったかのように消えていく。
「なら……あたしが……監視して……やる、よ……」
「ゼオラ!? あ、あれ!?」
身体が消えていくコトルクスをよそにゼオラがその場に倒れた。
僕が慌てて駆け寄ろうとすると、なぜか身動きが取れなくなり、視界が遠くなっていく。
『……ここに居たのね。戻ってきて』
「誰……? いや、この声は――」
「わおーん」
近くに来ていたシルヴァを抱きしめると、そのまま僕は意識が遠くなっていった。
ゼオラ……一体どうなってしまったんだ――
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