第百三十七話 新たな能力? というもの


 というわけでフォルテという新しい仲間と辺境へ到着した後の協力も得られた僕達。再び辺境へ進行していた。


【森を抜けると歩きやすいから助かる】

「でかいもんねボルカノ」

【ま、こういうのが居たら野盗連中みたいなのも手は出しにくくなるだろうぜ】

「そうだね。ゼオラも偵察をしてくれるから助かるよ」


 てくてくと軽やかに横を歩くボルカノ。森を抜けてから広々とした場所に出たから楽そうである。

 この辺は草があまり生えていない荒野みたいなところで、ここを抜けると目的地周辺なのだとか。

 とりあえずお昼を回ったので今はお昼ご飯を囲んでいた。


「相変わらずゼオラさんの姿が見えない……この辺ですか?」

「あ、話に聞いていたゴーストさんですかぁ? この辺?」

【全然違うぞ】


 バスレさんはやはり見えないらしく、まったく別の方向を向いていた。ベルナさんは誘導され、そこで頭をさげていた。僕の視線で分かりそうなものだけど……。


「ゼオラはだいたい僕の頭の上に浮いているよ。今はこの辺」

「見えないですけどよろしくお願いしますねぇ」

【天然というやつかな。別に見えなかったら気にしなくていいと伝えてくれ】

「オッケー」


 ということで調査した結果、今のところ見えないのはバスレさん、ラースさん、ベルナさんとトリーアさん、そして新しく加入したフォルテも見えないらしい。

 そういえば兄ちゃんズもダメだったっけ? 家族だと母さんだけ見えていたような……?


「クルルル?」

「こけっこ」

「わふん」


 シルヴァ達には見えているので一生懸命示唆するけど、フォルテは鼻をふんふんさせるだけで見えないようだった。付き合いの長さで行くならバスレさんは最初に見えそうなものなんだけどね?

 

「なんなんだろうな? まあ、オレは見えなくても支障はないけど、偵察してくれているならウルカ様にだけ報告が行くよりラース様やオレに来るといいんだけどな」


 トーリアさん曰く、例えば僕が寝ている時にゼオラに起こされたりするのは良くないという。子供だから睡眠はしっかり取るようにとのこと。


【確かに動物達じゃ話せないしな】

【拙者経由で良いのでは?】

「あ、確かに」

「嫌です。夜中にいきなり骨が起こしに来たらそのまま寝てしまいます」

【おう……辛辣……】


 バスレさんはオオグレさんが苦手だから仕方ない。するとゼオラがこんなことを言いだした。


【よし、ウルカ。見えてもいい奴を申告させてくれ】

「え? えっと、ゼオラを見たい人は手を上げてー」

「ん? なんとななるのか?」

「はいはーい♪」

「オレもだな」


 ラースさんとベルナさん、トーリアさんが手を上げると――


【えい】

「お、おお!? そちらの美人がゼオラさん?」

【よせよ、照れるぜ】

「口は悪そうだけど……見えるな」

「ええ! 初めましてぇ♪」

【ベルナだったか、よろしくな!】


 握手を求めるベルナさんに手を差し出し、スカっとすり抜けるお約束をやってくれた。


「というか『えい』で出来るもんなのかい」

【まあ、基本的に『人間』には見えないんだよ。獣人もな。特殊個体であるウルカや母親なんかは見えるんだ。人間には意図的に見えないようにしていた感じだな】


 実は元々できたらしい。けど、余計な混乱を招くから自分から見せるようにはしなかったとのこと。確かに兄ちゃんズとか見えてなくてもなんとなってたしね。


「声が聞こえるようになったのはありがたい。よろしく頼むよゼオラさん」

【おう!】

「あ、でもアニーやステラが見えるのはなんでなの?」

【え? あいつらはウルカの眷属みたいなもんだからだぞ。お互い信頼しているからウルカのモノって感じぃ?】

「え!?」


 なぜベルナさんの真似をしたのか分からないけど衝撃的なことを口にしたぞ!?

 

「血を吸っていないのに……」

【色々教えたりして触れ合う機会が多かったからだろうな。バスレは大人として見ていたから多分お前の意識の問題だろうな】

「なるほど」

「なんですか?」


 多分、僕と同等かそれ以下、もしくは友達だと認識して付き合いが長いとそういう風になるらしい。バスレさんはずっと尊敬する人だから友人枠でもないし、父さんや兄ちゃんズも家族だけど僕の感覚的に枠外なのだろう。


「まあ、その辺はいいとしてゼオラさんが見えるようになったのは大きい。もしなにかあれば、そうだな特に戦闘系のごたごたが発生しそうなら俺かトーリアさん、それかベルナに伝えてくれ」

【オッケー。あたしも話し相手が増えるのは悪くねえからな】


 今までそうしなかったのは混乱を防ぐためかな? 口は悪いけどちゃんと考えているからねゼオラって。


「それにしても……本当にすり抜けるのねぇ。魔法とか使えないんですかぁ?」

【ああ。基本的にウルカを通してじゃないと無理だな。ほら<ソードブレイカー>】

「おや!?」


 ゼオラが誰もいない荒野に向かって笑いながら適当に魔法を放つ仕草をした。すると彼女の手からとんでもなく硬そうな大盾が出現した。


【あれ?】

「でましたねぇ」

「なんか空中に大きなものが……」

「あ、これは見えるんだ」


 ゼオラには謎が多いな……? まあ、調べようもないんだけどね。


「ウルカを守れるというのが分かったってことでいいかな?」

「だね。これからも頼むよゼオラ」

【オッケー、オッケー! でもなんでだろうな?】


 やはり本人にも分からないようで首をひねっていた。それはともかく再び出発し、僕達はついに辺境へと到着するのだった。

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