第三話 数年後というようなもの
「ウルカ、五歳のお誕生日おめでとう!!」
「今日はママがご馳走を作ったからたくさん食べてね」
「ありがとう父さん、母さん、兄ちゃん達!」
「でかくなったよマジで!」
「まったくだぜ。ウルカは賢いから将来も有望だな!」
「あはは……」
――あれから五年……僕は記憶を持ったまま転生をし、今まさに五歳の誕生日を祝われている最中である。
ウルカ、というのが現在の名前で本名は『ウルカティウス・バーン・ガイアス』。
頭だけとってウルカというわけだ。
父さんはロドリオ、母さんはクラウディア、長男はギルバード、次男はロイドといって僕は三男だったりする。
そんなガイアス家は前の家族と同じくらい優しく、差別などもまったくないし分け隔てなく育ててくれている。正直、この上なく幸せだ。
幸せなのだが――
「……どうしてこうなった!?」
「どうしたのウルカ? 急に叫んだりして」
「あ、ううんなんでもない。このラザニア美味しいよ」
「ママの自信作だからね!」
――僕は普通の人間として産まれ、ユキさんに願った不死の王として産まれなかったのが腑に落ちない……。
やはりジャージ女神の力はその程度なんだろうか?
まあ、五年間、風邪とか引いたことがないので身体が丈夫というのは僕にとって良いことだ。
そこでお祝いのジュースとケーキを用意しながら母さんが口を開く。
「そろそろ家庭教師をつけないといけないわね」
「学院には行けばいいんじゃない? まだウルカには早いと思うけど」
ギルバード兄さんがスープを口にしながらいいことを言ってくれる。さすがに五歳で勉強はやりたくないな、と病室で教科書を開いていたことを思い出す。
「今の時代、勉学が大事よ! ウルカちゃんは賢いし大丈夫よ」
「うーん、僕はもうちょっと遊びたいかも」
「そうしましょう!」
「心変わり早っ!?」
「前みたいに遊んでやれないのが寂しいよオレは。卒業したらもっと会えなくなるし」
次男のロイドがパンを千切りながらしみじみと言う。
ギルバードとは双子で俺と十歳離れている二人は学院通いでもうすぐ卒業。そのままギルバード兄ちゃんは父さんの手伝いでロイド兄ちゃんは騎士になるべく養成所へ行くと決まっている。
「お前の分まで可愛がってやるから安心しろって。というか休みは帰ってくるんだろ?」
「当然」
「まあまあ、先の話はおいといて今日は祝い、主役はウルカだぞ」
「だな! 母ちゃんチキンは俺が切るぜ」
「みんないい子でママ、嬉しいわ」
……とまあ今日だけではなく、いつもこんな感じ。
ああ、そうそうウチは小さい屋敷を構えている貴族の一人で、一応平民より位は上……なんだけど父さんに出世欲が無いので中途半端に小金持ちなんだよね。可もなく不可もなくって感じだ。
「剣術はオレが教えてやるからな! 魔法は母ちゃんだ!」
「うん、ロイド兄ちゃんは凄いもんね」
「おお、ギルバードの兄貴は学術でいいよな」
「異論はない」
「パ、パパは……」
「お父さんは褒めてくれるから!」
「うんうん」
「あーもう可愛いなあウチの子は!! パパ頑張っちゃうぞ!」
そう言って席を立ってから僕を抱っこする父さん。
遅くに生まれたから家族みんなで可愛がってくれるのは中身十七歳でも嬉しいもんだなと感じる。
そんなわけで僕は無事転生して五歳までしっかり生きている。
持病も無く家族がエグいとかそういうことも無いのでこのまま普通に暮らせるんじゃないかな?
勉強も学院に行けばいいし、友達もそこできっと出来るはずだ。今は前の世界で出来なかった子供時代を楽しむとするよ。
……あれ? でも僕って小学生くらいまでは元気だったような気がするな……。
「ま、いっか」
「さあさ、デザートもあるわよ♪」
「わーい!」
今更、昔のことを思い返しても仕方がない。
僕はフレッシュなフルーツとヨーグルトを食べながらそんなことを思うのだった。
「それじゃおやすみなさい」
「明日は森へお散歩に行きましょうね」
「はーい!」
「パパも……」
「パパはお仕事があるじゃない」
「とほー……」
「あはは……」
父さんは少々頼りないかなと思うけど、優しいから仕方ない部分もある。そこは母さんや兄二人が心強い。
僕も大きくなったら父さんのサポートが出来るようにならないとね。
とにかくこの五年で家族のことがある程度わかり、前世と同じく愛されている家庭に生まれたことに喜びを感じる。
これもきっと女神ユキ様のおかげなのだろう。
……しかし気になるのは最初に『不死の王リッチ』にしてくれと頼んだにも関わらずそれらしい兆候は一切ないことだろう。
もしかして金持ちのリッチと間違えたのか!? とも考えたけど、ウチは大金持ちでもなんでもない。
まあ、健康な体でそこそこの家。
で、仲の良い家族が居ればそこまで不安になることはないんだけど、こうなるならあの時あんな質問をしなければ良かったのにとも思う。
「期待させておいて……」
「ど、どうしたウルカ? パパのプレゼント、気に入らないか?」
「そ、そうじゃないよ!」
おっと、思わず呟いていたのか。
……まあ、父さんのプレゼントはどこかの民族が作っていそうな木彫りの人形なので微妙は微妙なんだけどね。
「よーし、ケーキはオレが切ってやるからな!」
「ロイド、お前は雑だ。俺が切る」
「んだと!? ウルカはどっちがいい!」
「ギルバート兄ちゃんかな」
「うおおおおおおお!?」
ま、悪くないよね? 後は危険をどう避けるか……色々勉強しないとなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます