第129話 義娘ですよ
ここまできて材料がないとかはやめてほしい。
その願いを込めて二人からの言葉を待つ。
「確かに昔は二つとも持ってたんだが、今は
「そうね、白竜の角はお料理に使っちゃった。白竜ってそういえば見かけなくなっちゃったわね」
二人とも何か軽い感じでサラッっと言ってるけど、こっちは一大事ですからね?
角を料理に使うとか普段何食ってんすか!?
「誰か他の人が持ってるとか、何か心当たりはないですかね?」
「心当たりはあるが――――南の最果てにいる竜族なら持っているだろうが、あいつら気難しくてな。おススメはできん」
ルフィールさんの顔を見るお義父さん。
共にやめておけとばかりに渋い顔を作って頷いてくる。
「解呪しないとヴェルラヤが悲しむんですよ。何としてでも取りに行きます」
「そこまで娘のことを考えてくれていたのか――――さっきはすまなかった」
「ヴェルラヤちゃんは幸せ者ね」
「あ、いや、あはははは…………そんなことないですよ。お義父さん顔を上げてください」
ギリギリと胸が痛むぜ! 騙してるわけじゃないはずなのに、謝りたい衝動に駆られる。
ごめんなさい! 全部俺の欲望復活のためです。欲望全開で子孫繁栄させないとフィアンセが悲しむんですあとからスキル使用は勘弁願います真っ黒ですごめんなさいッ!!!!!
「お、そういやまだ紹介してなかったな。お前を呼び寄せるついでに三〇〇年ぶりに二人目の娘に連絡してな、今日呼んであるんだ。そういうことならあいつは竜族の国までの道も知ってるし、多少顔も利くだろう」
「二人目の娘? ヴェルラヤに姉か妹がいるんですか?」
そんなことはまったく聞かされていない。
ムドーにも聞かされたことはないし…………知らない間に子作りしてた?
「ああ、娘といっても義娘って感じだ。血は繋がっていないし、正式なもんじゃない。最近までまったく男ができただ惚れただって噂が流れてこなかったんだが、やっといい男が見つかったらしくてな」
少し嬉しそうに語るお義父さんの膝の上に、ルフィールさんの手がそっと置かれる。
こうやってると仲睦まじい夫婦って感じだな。
「ルー、ちょっと呼んできてくれないか?」
「わかったわ。ゼオリス君、義娘もかなりの美人だから気をしっかり持っててね」
何だろう……気絶するくらいの美人なんだろうか。
ルフィールさんは何やらウキウキしているようで軽やかに部屋を出て行った。
鼻血が出ないかだけチェックしておいたほうがいいかな? って煩悩がないからチェックの必要性はないだろう!
数分すると部屋の扉がノックされる。
先に入ってきたのはルフィールさんだ。その後について入ってきたのは――――――――。
「リューイ!!!!」
『これはゼオリスさまっ――――あっ』
しまったとばかりに口元を押さえるリューイ。
そもそも声出てねえし。
こっちもややこしくなる前に左手の指輪を外してポケットにしまおう!
リューイが出てくるなんて予想外すぎるッ!
『まだ精神回路解除してなかったのかよ。さっさとしろ、今すぐしろ!』
少し拗ねたような表情を作ったかと思えば、頭の中で何かかがプツンッと途切れたような感覚があった。
「何だ、お前たち知り合いだったのか」
「世間は狭いものねぇ。まさか二人が知り合いだったなんて。ヴェルラヤちゃん関係で知り合ったの?」
リューイは誰に言われるまでもなく、俺の隣の席に当然の如く腰を下ろす。
そしてこちらに一瞬視線を向け微笑むと、再びお義父さんのほうへ顔を向けなおした。
「オジ様、ルフィール様。この方がわたくしの愛しい人ですわ」
おい!!!!! 何かランクアップしてるじゃねえか!!!!
何だよ愛しい人って…………こんな所でそんな発言したらヤバいのがわからないのかよ……。
大人しく帰ったと思ったら背後に超大物についてもらう計画を立ててたのか……。
「ん? リューイが最近夜も眠れず、男に会えず悶えた日々を送らねばいけなかったというのはゼオリスのことだったのか?」
何てことまで話してんだよ……つうかこんな話を聞いて普通にしてる二人もどうかしてるよ!
離れている間にリューイは完全にメロメロになってしまったということか……。
「そうですわオジ様。この方こそわたくしの夫となる人ですのよ」
「ん~それはヴェルラヤちゃんも知ってるのかしら?」
「当然ですわ。ですからこうして報告しているのですわ。それはそうと呪いはどうなりましたの?」
こちらを向いてニッコリと微笑むリューイ。
怖いくらいに優しい。
しかし、俺とリューイはそんな関係じゃないしヴェルラヤの承認を得ているわけでもない、が今ここで俺が否定したら呪いのことをバラすかもしれない。いや、絶対そうだそうに違いない! あの笑顔は俺への警告が込められている気がするっ!
「ああ、一つはここにあるらしいけど、もう一つは竜族の所に行かないとダメっぽい」
「リューイちゃんにはゼオリス君を竜族の元に案内してあげてほしいのよ。それはそうとゼオリス君、リューイちゃんの言ったことを否定しないってことは、そういうことなのね」
ルフィールさんがリューイの夫発言をスルーしてくれなかった。
スルーするほうがどうかと思うよね。ツッコミ入って当然のことだもんね…………。
「そうか、ヴェルラヤにリューイまでもか…………」
ダメだ……最悪の場合、今から殺し合いが始まってしまう!
お義父さんの双眸が怖いくらいに俺の心を硬直させてくる。
「娘二人、よろしく頼む」
お義父さんは頭を下げるとテーブルに額を押し付ける。
何が起こったか理解が追いつかない。
俺は大事な一人娘を奪い、その他にもフィアンセを作り、挙句の果てに義娘までもいただくという形になっているんだが!
何だかよくわからないが呪い様様だ! すべては呪いのおかげでこのピンチを切り抜けられた! サンキュー百足婆さん!! あの世で臍を噛んでてくれ!!
「任せてくださいお義父さん! 二人とも幸せにしてみせますよ!」
「そうか、あそこまで無垢な心を持ったお前だから任せられる。頼んだぞ!」
熱い抱擁をし背中をバンバンと叩き合う。
男と男の誓いの抱擁だ。言質は頂いた。後から真っ黒な心になっても、文句は言わせませんよ!
どうしてこんな展開になったのかわからないが、とにかくリューイを貰うことになっちまった!!
ハハハハッハハハハハもう笑うしかない、鬼畜王バンザイッ!!
「――――と、ここで一つ問題があるんですが、今は基本ヴェルラヤはガールダを離れ俺の家にいますし、リューイも竜族の案内に連れて行くとなると国を治める者がいなくなると思うんですが」
「ああそのことか」とソファに腰を深く掛けなおすお義父さん。
「それなら久しぶりに俺が出張ってやろう」
「そうですね。ヴァルレイはガールダを、私はグディードに赴くことにします」
「はっ? それじゃあ離れ離れになるじゃないか!」
「子供じゃないんだから、それくらい我慢しなさい」
二人は言い争うように意見を述べ合い、納得がいかないお義父さんは折れるつもりがないらしい。
それをただ黙って見守ることしかできなく、リューイに至っては苦笑いで若干引き攣っている。
「――――だから一緒に、交互に行き来すれば問題ないだろ」
「グディードは特別なのよ。あそこの国民を男が統べるなんてできっこないわ。ねえリューイちゃん」
「そ、そうですわね。特殊な癖がある者が多数いるので……」
「ほら、リューイちゃんもああ言ってるし、それぞれ代役をやるほうがいいわ」
お義父さんは「ぐぬぬぬっ」と唸りながら拳を握り締めている。
そこまで離れたくないのかよ…………俺なんて独りでいるほうが気楽でいいってのに。
「それにね、暫く離れてると次に会った時のほうが
「そうだな! その楽しみがあった! よし今日から禁欲生活だぞ! 俺も義息子を見習わなくてはな! フハハハハハッハハハッッ!!! 今から例のプレイの準備をしておかなくては」
ヴェルラヤの相手には過剰なまでの白さを求めたのに、自分たちは真っ黒じゃねえかよッ! つうか今から準備とか早すぎるだろッ!! どこまで楽しみにしてんだよ……。
今回一番真っ黒だったのはお義父さんということで決定だな。
それにしても羨ましいくらい仲がいいんだな――――俺も見習おう。
というわけで
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