第2話
再配達のメールが届いたはいいけど、送付されていたURLにアクセスできなかったので、メールのことはほったらかしになっていました。
しかし次の日、おかしな事が起きたのです。
その日も夜勤明けだったのですが、朝の9時半くらいに、スマホが着信音を鳴らしました。
ディスプレイを見てみると、そこには知らないスマホの番号が。誰かが電話を掛けてきたのです。
まだ朝早いのに知らない番号から。いったい何だろう?
不思議に思いながら、とりあえず電話に出ました。
電話の相手は、声の感じからして50代くらいの男性でしょうか。そして、不可解なことを言ってきたのです。
『すみません。荷物の再配達をお願いしたいのですけど』
…………???
頭にハテナが浮かびました。
荷物の再配達をお願いしたい?
再配達をしたいというのなら話はわかります。この人が宅配業者で、自分がいつまでたっても返事をしなかったから、向こうから電話を掛けてきたということかなって、一瞬思いました。
けどよくよく話を聞くと、どうも向こうは自分のことを、宅配業者だと勘違いしているみたいだったのです。
いったいどういうこと?
とりあえず相手に、自分は宅配業者ではないということ。番号が間違っているんじゃないかと告げると、相手は謝って電話を切りました。
どうにも変な電話でしたけど、きっと番号を入力する際に間違えたのでしょう。間違い電話が掛かってきたことは今までも何度もあったので、特に気にも止めませんでした。
しかし!
それから夜勤に備えてまた寝ていたのですが、再びスマホが鳴って、叩き起こされました。
通話着信です。さっきとは違う、別のスマホから掛かってきていました。
眠い目を擦りながら電話に出てみると、相手はこう言いました。
『荷物の再配達をお願いしたいのですが』
……おかしいです。
似たような電話が、立て続けに二度。それも別の人から掛かってきたのですから。
とりあえず今度も、自分は宅配業者でないことを伝えて電話を切ったのですが、その時頭にある考えが浮かんでいました。
ひょっとして、自分の電話番号が勝手に使われてる?
そして再配達で思い出したのが、先日自分に届いた、不在と再配達をお知らせするメールです。
URLにアクセスしようとしたらセキュリティが働いたことといい、もしやあれは詐欺のメールだったのでは?
幸いアクセスせずにすんだわけですけど、ショートメールが送られてきたということは自分の電話番号が割れているということ。
もしや自分の電話番号を勝手に使って、同じようなメールをばら蒔いているのではないかと、不安になりました。
そしてその不安は、おそらく当たっていたのでしょう。
それからもう一度、見ず知らずの相手から再配達をお願いする電話が掛かってきました。
そしてさらに、今度はこんなショートメールが届きました。
【さっさと持ってこい 死ね】
うーん、きっとこれは、自分と同じ詐欺メールを受け取った人が、詐欺と気づいて記載されていた電話番号に怒りのメッセージを送ったといったところでしょうか。
でも残念。自分も巻き込まれただけの被害者なのですよー。
攻撃的な文章を送られてきたわけですけど、送り主に対して怒りは沸いてきませんでした。こんな騒動に巻き込んでくれた真犯人に対しては、自分も同じように憤りを抱いていましたから。
しかしこれはまずいです。ここまでくると、自分の電話番号が悪用されているのは間違いありません。
何か手を打たないと。
しかしそこで、タイムリミットが来てしまいました。
夜勤に出掛ける時間になってしまったのです。
正直不安ではありましたけど、仕事を休むわけにはいきません。
この問題は明日どうにかするとして、まずは仕事をしなければ。
そして実はこの時、もう一つビックリするような事態が進行中だったのですが……それはまた後で話すとしましょう。
というわけで仕事に出掛けたわけですけど、仕事中は詐欺メールや電話番号が勝手に使われている件で頭がいっぱい。
それどころかもしかしたら、不正にお金が使われていやしないか。こういうトラブルでは定番の展開ですから、ついそんなことまで考えてしまい、この日は仕事が手につきませんでした。
はたして自分はどうなってしまうのか。
そして犯人、ゼ ッ タ イ ユ ル サ ン!
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