反乱聖女は公女の私が娶ります。
広田こお
第1話 反乱軍討伐
この大陸は偉大なるアトラン帝国とそれに従う多くの王国によって治められていた。
その絶大な権力も腐敗し、いまや、重税につぐ重税で、多くの国は困り果てていた。
しかし、希望があった。それは……
「聖女軍が現れたと……」
「はい、それもかなりの数のようです。正直我々公国軍には手に余る勢力ですな……」
「しかし、その……。率いるのは弱冠12才と言われている少女なわけだろ?」
「そうですね。しかし、聖なる少女に率いられた彼らの士気は非常に高い……。侮れないと思います」
……正直、あまり闘いたくない相手ではあった。なぜかって、公女の私も帝国がよくわからない名目の税金を増やしていくことに疑問しか感じなかったからだ。
「ま、大義名分には同感するよ……。正直ね。でも……」
……ここで私に負けるような相手なら、到底帝国を倒すなど夢物語に決まっている。
「主力の騎士だけを率いて説得にいくことにするわ……。降伏勧告ってやつね」
そして、かの聖女軍の前で私は……
「ねえ、聖女さんとやら……。こんなことをして何になるというの?あなたが反乱を起こしたことで、この地の帝国の取り締まりは、以前より輪をかけて厳しくなると思うわ……」
「わたしが、いつものように一過性の反乱をするのであればそうでしょうね……。でも今回は違う。公女さん。あなたの公国は比較的まともな政治がされてきた、と聞いている。だから私はあなたを説得しに来たの、私と手を組んで、帝国と闘いましょう!公国の正規軍の力と、聖女の力が合わされば不可能はないはずよ」
……そうきたか。でも、あなたと組むのは、あなたが力を示してからよ。
「……私と一騎打ちでもする?聖女さん。あなたが勝ったら……、あなたの条件をのんであげる。でも、私が勝ったら、あなたには私にしたがってもらうわ」
私が一騎打ちを持ちかけると
黄金色の長髪、翡翠色の瞳をした、白い聖印が編み込まれた服を着た彼女が短剣だけを携えあらわれた。
「いい覚悟だわ……」
そういうと私は、わたしは彼女に長剣を突きつける。
そして剣聖の誉れも高い剣で悠々と彼女を倒した。
聖女が倒されれば、残りの聖女軍は寄せ集めの兵にすぎない、あっという間に消え去っていた。
「私の負けですね……。では私はあなたの言うことをなんでも聞きましょう……」
と聖女は潔く言った。
「……そんなんで、よく帝国に刃向かおうと思ったものね……」
「ゴタクはいいです。私になにをお望みですか?聖女の処女が欲しい、というのならさし上げてもいいですよ……。あなたは女性ですが、男勝りだ。そういう趣味がおありで応じることで命を救ってもらえるなら……処女ぐらいはやってもいいぞ?」
……おいおい、確かに私は男勝りの剣聖だが、女性を抱く趣味はない……。たくっ、人の噂ではそういうことになっているのか?迷惑だなぁ……ほんと。
「残念ですけど、私は女性です。心も体もね」
「何も要求なしで、解放してくれるなら、一番助かるのだが……」
……うーむ。
「もう、こういう活動しないでもらえます?正直迷惑なんで……」
「民草を救うこの活動が迷惑とは?」
「……理想だけじゃないですか。現実にはあなたは負け続け、誰も助かってない」
「っく、だから手を貸して欲しいんだ……」
「手は貸せないですよ……。そんな弱いあなたと手を組んでもしかたないでしょ……」
とその時めまいがした。
気付くと私は聖女になっていた。入れ替わりの能力!
やつは最初からコレが狙いだったのか……。
公国はかろうじて正義が守られている国として名が売れている。
そして、そこそこ、軍も精強だった。
その日から、聖女は、わたし公女ウィル=スォーデンとして、スォーデン公国を治めることになったのである。そして、元公女の私は聖女の体を持ったまま、とらわれの身になってしまった。
だが、私は、聖女になったことで、知ってしまった。
聖女はなんと、男の子だったのである!!
こうして、私は、自分の体を奪われたばかりか、女性から男性への性転換をすることになってしまった。いくら男勝りだったとは言え、正直これはこたえる。
だが、それは男の子だった聖女のほうも同じだったらしく、
「おんなって面倒なんだな……、いろいろと」
と私に言ったものだった。
「私の躯を返しなさいよ!」
「やだね。だって一騎打ちに勝ったのはオレだろ?」
「卑怯者!!」
「褒め言葉をありがとう」
こうして、男の子だった聖女と男勝りの公女の私の躯を入れ替えた人生がはじまったのだった。
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