第39話 決死
「やっぱりな。さっきよりか……弱い」
「足に力がね……でも負けないよ」
押し合いの中、彼は剣に左手をあてがう。
……今まで右手だけだったのにだ。
「本当は片手で構えるのが身軽で好きなんだけど……しょうがない」
ググッ……!
(こいつ……! さっきとほとんど変わらない強さに……!)
条件はほとんど対等なのに俺は押し負けている。
「なかなか……やるね……うおおおおぉ……!」
(! 押しが一層強く……!)
ズザザザ!
「ぐぅっ……!」
なんとか踏ん張ろうとしたがライトに強引に押されて、
俺の足が地面を削っていく。
「やめろっての!」
スカッ!
「くっ!」
このまま押され切るのはごめんだ。
俺は強引に剣を動かして押し合いから抜け出し、
ライトの首辺りを狙って剣を横に振り抜く。
彼は少し面食らったようだが、上体を後ろに逸らして俺の剣を避けた。
「せいっ!」
流れを奴に掴ませないように、続けて縦に斬る。
だがこれも彼は一歩後ろに下がって避けた。
「好きには……させない!」
ゴッ!
「!?」
俺は縦に振った剣を返すことで、三撃目に繋げようとした。
だが、振り上げる直前にライトは俺の剣に向かって突きを放ち、
剣の切っ先で俺の剣を抑えた。
ここまでの事をされるのは流石に予想外だ。
(剣が動かない……!)
「ハアッ!」
ドスッ!
「ゴフッ……!」
次の瞬間には彼の蹴りが俺の胸部をとらえ、
俺は思わず剣も手放して後ずさった。
「せーのっ!」
ズバッ!
「ッ……!」
そして、トドメと言わんばかりに彼の剣が俺の脳天に直撃する。
視界が瞬き、手足に力が入らなくなり、俺の肉体が限界なのがよく分かった。
「ハア……ハア……君は……強かったよ……」
片膝を着いた俺を見て、ライトは締めに入っている。
「……まだだ」
「え?」
……正直。この化け物相手に勝てるなんて最初から思っちゃいない。
「うおお!」
ガシッ!
「なっ!?」
俺は残った力で彼の胸ぐらに掴みかかる。
……そして。
「オラァ!」
バキッ!
「っ……!」
俺は彼の右手首に渾身の裏拳を叩き込む。
流石の彼も剣を手放す。
「離せっ!」
バンッ!
「くっ……」
ドサッ……
彼の残った左手で突き飛ばされて倒され、視界は空の青色に染まった。
流石の俺も動く力は残っていない。
「勝者!青組!」
「あーあ……分かってたけど悔しいな……」
俺はそう呟きながら額の汗を腕で拭う。
ほんの少しだけ顔を起こして、ライトの事を見る。
彼の右足は俺に踏まれて土に染まっていて、右手は青痣が出来ていた。
(……俺のやりたい事は出来た。後は託すだけだ)
「マロン。後はよろしく」
「……ああ」
倒れたままそう言う俺に、彼女はいつも通り静かに返答した。
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