第38話 VSライト

「ぐええー!」

「勝者!青組!」


その後もザコスはそこそこ頑張ったが、一戦目で全力でやり過ぎたのか

二戦目ではバテてしまい、あっさりとやられた。


「うう……申し訳ねぇ……」

「いや相当頑張ったよ。お疲れ様」


俺は彼にタオルを渡しながら労いの言葉を投げる。

そしてそれから……


「プゲラ!」

「勝者!赤組!」

「グヘェ!」

「勝者!青組!」

「ウップス!」

「勝者!赤組!」


特に見どころも無く一進一退の展開が続き、とうとう奴の出番がやって来た。


「おい、ライト。お前の出番だ」

「……あ、僕の出番か。よし……」?


静かに立ち上がり、彼は舞台に上がる。


「準備はいいな?」

「うん、いつでも大丈夫です」

「では……始め!」


試合開始の掛け声が響き、彼に向かって赤組のメンバーが突撃した。


「うおおぉ!」

パァン!バキッ!ドサッ。


……何が起きたのか。「パァン」という音がしたと思ったら、

ライトの目の前に人が倒れている。


「……?」

「……?」

「……?」

「……あ、ちょっと本気でやり過ぎたかな?大丈夫?」


倒れた彼、審判、俺。その場にいた誰もが状況を理解できず、

最初に声を発したのはこの状況を作り出した彼自身だった。


彼は自分が倒した相手を心配しているようだ……


「し、勝者!青組!」


と、ここで審判がライトの勝利を告げる。


「あ、それより担架を一つ持ってきた方が……この人気絶しちゃってて」


ライトがそう言い、ハッとした様子で皆動きだす。

五分程して、倒れた彼は保健室に運ばれていった。


「なあ、マロン。アイツが何したか見えた?」

「……大体はな」

「マジで!?」

「ライトは最初に足払いのように剣を振った、

その勢いが強過ぎて身体が宙を舞い、次に垂直に剣を振り下ろして

浮いた身体を空中で叩き落とした」

「えぇ……人間技じゃない……」

「……私も目を疑ったが……そうしたようにしか見えなかった」

「……だとしても戦うしか無いんだけどね」


彼の人外ぶりを理解しながら、俺は前に出る。

俺は次鋒、四番目として戦う。

自分で決めた事なのだから、迷いは無い。


「よう、さっきぶりだな?」

「えっと君は……」

「自己紹介がまだだったな。俺はノーティス」

「ノーティス君か……さっきは君達に良いようにされちゃったからね。

こうやって一対一でもう一回戦えるのは嬉しいよ」

「嬉しいかぁ……楽しもうとしてるようには見えないんだけど」

「んー……僕は普通にやってるつもりなんだけど……」


彼の顔からはなんとなく物悲しさを感じるが、

慈悲をかける余裕なんて俺には無い。


「……君は普通でも俺は本気で行く」

「本気でやってこそのクラス対抗戦だもんね。よろしくお願いします」


……やっぱりどこかズレを感じるなぁ。


「では、両者構えて……」


そんな事を話している内にもう始まるようだ。

俺はいつも通りに構えるのに対して、ライトは右手に剣を持つだけで

特に構え等は見られない。


「始め!」

「……」

「……」


彼にどうやって攻めたものか……開始の声は鳴ったが睨み合いが続く。


「こっちから行くよ!」

タンッ!

「!」

スカッ!

(危な……!)


ステップで距離を詰めてからの顔狙いの突きになんとか反応し、

半身になる事で避ける。


クイッ。

「うおっと!」

ヒュン!


次に手首を曲げて刃を俺に向け、切り払う。

俺はしゃがんで回避する。


「いきなり怖いっての!」

ドカッ!

「くっ……流石リーダーだね」


しゃがんだ体勢のまま俺は目の前のライトに蹴りを入れる。

しかし、膝で防がれてしまい彼との距離を離す事は出来たが、

ダメージは全く入っていない。


(受け身になってちゃ押し切られるな……)


俺はそう感じて、自ら攻める事に決める。


「今度はこっちのターンだ……」


彼が剣を握っている右手の甲を狙い、横に斬ろうとする。


「やるね!」

ボゴッ!

「クソ……!」


だが、彼は俺の狙いを見透かし、直ぐに剣で俺の攻撃を受けた。

俺が両手なのに彼は片手だが、全く押し切れる気配がしない。


「まともにやってらんないな……!」

ガツッ!

「痛っ!」


俺は左足を一瞬だけ持ち上げ、彼の軸足である右足を踏みつける。


ギリギリギリ……!

「……くっ」


彼との押し合いが続く程、俺の左足が彼の右足を踏みにじる形になり、

さすがの彼も少し顔を歪ませている。


「そういう戦い方も有るんだね……!」


ライトはそう言うとフリーだった左拳を握り……


ドスッ!

「ゴハッ……!」


俺のみぞおちに向けて正拳突きが放たれる。

当然避けれるはずも無く、俺は数歩下がった。

……正直胃の中身が逆流しそうだ。

昼食を控えめにしておいて良かった……


「いてて……痛み分けってところかな……」

「……ああ、そうだな」


彼は解放された右足をプラプラ振って痛みを紛らわしている。

形はどうあれ、初めてまともなダメージになったようだ。


「じゃあ次はこっちの番だ!」

「……!」


俺だってみぞおちの痛みが残っているというのに、彼は直ぐに向かってきた。


ゴツ!

「……立ち直りが早過ぎるぞ」

「そうかな……?」


彼が垂直に振り下ろした剣を受ける。

再び押し合いになるが、足の影響かさっきに比べるとほんの少しだけ力が弱い。


(こいつだって人間だ……倒せない訳じゃない!)



これ以上続くと長くなり過ぎるのでここまで。

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