第36話 策と覚悟

食堂での騒動のその後、これも何かの縁だとライトを誘って昼食を済ませた。

彼の口からは故郷の思い出や、学園に行く事ができずに困っていた所をラグロに誘われた事など平和な話ばかり語られていた。


(あわよくば彼の弱点とか聞き出せるかなと思ったんだけど……)


何も分からず、策も思いつかないまま俺は赤組の待機する校庭東エリアに戻る。


「みんなおつかれー」

「おう、リーダー」


サンドイッチなどの軽食を持ち寄って食べてるグループや、既に食べ終え暇を持て余しているクラスメイトの間を通って、元の場所に座る。


(ライトはこの世界の主人公だ……彼がゲームと同じ実力を持っているなら、彼に弱点は無いし、俺達に勝ち目は無い……)


ただ、一つだけ幸いなのは彼がこの学校に来てたった数日という事だ。

つまりほとんど成長していない状態であるということ。


「アイツはめちゃくちゃに強いけど……諦める程じゃないはずだ……」


なんとか策略を絞りだそうと考え込んでいると、目の前に誰かが座った。

顔をあげるとそこにはマロンが。


「……あ、おかえり。どうやら腹ごしらえは済んだみたいだね」

「ああ、そうだな」

「これ使いなよ。口にソースついてる」


口端に何か白いソースをつけたままの彼女を見かねてハンカチを差し出す。


「……済まない。気づかなかった」


礼儀作法を教育されてる彼女がその事に気づかなかったとは……

やはりライトに負けたショックは大きいようだ。


「なぁ、マロン。次に俺達はライトを倒さなきゃいけない。

倒せる自信はあるか?」

「正直、あまり自信は無い。アイツと私の実力は拮抗しているようで、僅かにアイツの方が上だ。まともに打ち合えば寸分の差で負ける」

「……そっか」


まともにやれば負ける。

つまりそれはどうにかして彼女を有利にすれば勝てるということだ。


「……俺に考えがある」

「?」


俺は彼女の耳元に口を寄せ、小声で自らの考えを伝える。


「……本当にやれるのか?」

「俺は君を信じてこの作戦に徹する。だから君も俺を信じてくれ」

「…………分かった。お前がそうしてくれるなら私は必ず彼を破ろう」

「ありがとう」


会話を終え、俺は心の中で覚悟を決めた。



「えー……長い休憩も終わっていよいよ対抗戦です。

二位と三位のチームは校庭中央に集まってください」


アナウンスに従って中央に集まる。

校庭の中央には縄を円状に置いて、簡易的な土俵が作られていた。


「それでは五人の代表メンバーは前に!」


そう言われて俺、マロン、そして怪我が軽傷だった

クラスメイトから適当に選んだ三人が前に出る。


(やっぱりいるよなぁ……)


向こうのメンバーには当然ライトがいる。

立ち位置からして俺と同じ副将(四番目)だろう。


「やってやるさ……俺は負けられないんだ」


俺はそう小さく呟きながら、彼を睨む。


(ニコッ)


……笑顔で返された。



次回!この小説の主人公VSゲーム世界の主人公!

ノーティス勝てるの?と思ったあなた。

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