第27話 憧れに近づいて

マロンとその父親はプライベート用の馬車を動かす為に家の敷地の外に

位置する、公用の馬小屋の中にいた。

そして、執事が馬を外に連れ出す為に手綱を着けているのを

彼らは見守っている。


「……なあ、マロン。さっきは言い過ぎたが剣を辞める気は無いのか?」

「無いな」


五十代にしては若々しい見た目の父親が

見た目に似合わない小さな声でそう言う。

マロンは先程と同じ答えを返した。


「マロン……」


頑固な娘への呆れとも、娘が自分の手を離れていっている悲しみとも

とれるなんとも言えない声色で、父親は娘の名前を呟く。


「おい」

「!」


そんな微妙な親子の雰囲気を破るように、

低くドスのきいた男の声が突如馬小屋の中に響いた。

?)

「誰だ?」


マロンが振り返ると、そこにはナイフを持ち、

茶色の布で口を隠した男が立っていた。


「俺らはハイエナ盗賊団。フリージア家の当主と令嬢とお見受けした。

貴殿らの命と財産を貰い受ける!」

「やめろ」


マロンはそう言って男の前に立ち塞がる。


「……これは面白い、お嬢様が俺らに立ち向かおうとは」

「口上はいい、来るなら来い」

ドンッ!


そう言ってマロンは盗賊を突き飛ばす。

盗賊は少し後ずさった、かと思うと、なにかに向かって目線を送った。


(……なにかの合図か?)

「はっはは!どうやらただのか弱いお嬢様では無いようだ……」

ザザッ!


いつからこの馬小屋に隠れていたのかナイフの男と似た

格好の者達が三人飛び出してきた。


「いけ!お前ら!このお嬢様に現実ってものを教えてやれ!」


ナイフ男はこの四人組のリーダーのようで、飛び出してきた三人にそう命令し、

自分は馬小屋の入口付近に立って出口を塞いだ。


「……父さん、爺や、下がっていてくれ。私がやる」


マロンは背中の大剣を抜いて構える。


「マロン……やめろ!お前が傷ついたら……!」

「やるしか無いんだよ。父さん」

「てめぇら俺らを無視するんじゃねぇよ!俺はそう言う親子感動の絆みてぇなのが一番嫌いなんだよ!」


飛び出してきた三人組の内、鉄爪を構えた者が叫びながらマロンに飛びかかる。


「切り裂いてや、ベプァ!」

べキィ!ベチン。


飛びかかって切りさこうとした男は空中でマロンの大剣に叩き落とされ、

地面に落ちた。


「次はどっちだ?」

「この女ぁ!」


次に剣を持った盗賊が突撃してくる。


ガキン!


剣と大剣がぶつかり合う音が響き、つばぜり合いの形になった。


「クッ……こいつ力強え……!」

「フン!」


マロンが全身の力を込めて押し切ると、剣の男は体勢を崩しながら後ずさる。


「うおおおおぉ!」

ブォン!バキッ!


そして体勢を崩した所に、大剣のフルスイング。

男の身体に大剣の面部分がぶち当たって吹っ飛ぶ。


「ぐはあああああ!」

ベチッ!

「ヒヒン!」


吹っ飛ばされた男は柱に当たり、近くの馬が衝撃を感じたのかいななく。

地面にずり落ちた男は気絶していた。


「次はお前か?」

「ひ、ひえええ!リーダー!」


戦意を無くしてしまった最後の男は

入口で見物していたリーダー格の男の方に逃げて行く。


「チッ……地元の寄せ集めじゃこんなもんか……」

「リーダー!」

「うるせぇ!お前は出口見張ってろ!」


部下を押しのけてリーダー格の男がマロンの前に立ち塞がる。


「役立たずな部下共のせいで勘違いしてるかもしれねぇが……

ハイエナ盗賊団は雑魚な組織じゃねぇ。この俺がいるからな」


そう言ってリーダー格の男はナイフを逆手に構えた。


(こいつ、今までの奴らとは雰囲気が違う)


マロンは本能でそう感じ取った。



何気にマロン視点の回は初ですね。

マロンに剣の道を辞めて欲しく無いと思ったら、

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