第四章 対抗戦に向けて
第24話 停学処分
「……暇だ」
学校内の編集室で壁にもたれかかり、天井を見上げながら俺は呟く。
「あの……まぁ……なんと言うか……ご愁傷さまです」
編集机に向き合うカイが、歯切れの悪い言い回しでそう言う。
彼女の手には町の新聞が握られており、内容はイロウが逮捕された事についての事だった。
「その新聞さぁ……何で俺がアイツを殴った時の写真が載ってる訳?」
「さ、さぁ〜……」
「……写真提供者はK.Sさんらしいけど」
「ギクッ!」
カイは分かりやす過ぎるくらいの反応を見せる。
「君だろ、この写真撮ったの」
「はいっ!違法労働の噂を聞きつけて取材に行ってて、
偶然あの騒動に出くわしました!」
……つまり、あの時は気づかなかったが彼女もあの場にいたのだ。
そして職員が逃げる時のどさくさに紛れてずっと隠れていて、
俺がイロウと戦っている場面をバッチリ写真におさめていた。
その写真はしっかりと新聞社に提供され、結果として発端が俺の
起こしたトラブルだという事が学校にバレた。
学校外で問題を起こした俺は当然停学処分をくらった。
「『特ダネ情報見つけた』って置き手紙にあったけどイロウの事だとはね……」
「ま、まぁ私の証言のお陰で正当防衛とか認められて、クラス対抗戦までには
停学を解除するって便宜を図って貰えたじゃないですか……」
「それについては感謝してるけどさ……」
まあ写真が無くとも目撃者は多い、
俺が騒動を起こしたのは遅かれ早かれバレていただろう。
そう思うと、カイがあの場にいたのはむしろ運がよかったのかも知れない。
「とにかく暇なんだよ、反省文とかはもう書き終わったし……」
「うーん……そう言われても特に思いつく事は無いですね……」
何か暇を潰せるような事はないかと一つ一つ思い出す、
レポート、魔法の練習……戦闘訓練……そうだ、戦闘訓練と言えば。
「……そう言えばマロンはどうしたの?」
「あー、マロンさんなら休みを貰って実家のトーシャ村に
帰省してるらしいですよ」
「帰省?長期休みでも無いのに……」
「クラス対抗戦の後は夏休みまで行事が多くて暇が無いんですよね。
あの娘意外と寂しがり屋ですし、大きなイベントの前に
両親に会いたくなったんだと思いますよ」
マロンにとってクラス対抗戦は「剣士」としての
自分をお披露目する大事な行事だ。
いつも落ち着いてるように見える彼女も不安は多いだろうし、
両親に会っておきたいという気持ちも分かる。
……自分も何度もそう思った。
「なるほどトーシャ村か……」
忘れかけていたが、トーシャ村と言えばこの世界の主人公が居る村だ。
既にゲームとは大きく変わっているこの世界で
彼(彼女)が今どうしているのか気にならない事も無い。
「よし、どうせ暇だし俺も行く」
「え……何でまたそんな?」
「ちょっと野暮用があるし、ちょうど良いかなと思ってさ」
(……この人ひょっとしてマロンさんの事好き?
そうじゃなきゃわざわざ女友達の実家に遊びに行ったりしませんよね。
思い返せば数いる生徒の中で真っ先にマロンさんを青組から
引き抜いてるし……)
「……どうした?そんな考えこんで?」
「え!いや!何でも無いですよ!」
「ああそう……じゃあ俺は旅行の準備でもしてくる」
「あっ、待って下さいよ!私も行きます!」
「えっ、なんで?」
「昨日の事で確信しました、ノーティスさんの側にいれば
何か面白い事が起きるって!だから私もついて行きます!」
「……まあ良いけど」
カイが言ったことは理由の内半分だった。
面白い事を記事にしたいと言うのはそうだが、
数少ない友人同士の恋模様が気になったというのがもう半分の理由だ。
……本当に恋が始まっているのかは分からないが。
「俺は良いけどカイは大丈夫なの?
あんまり休んだりすると進学出来なかったりするはずだけど」
彼女が授業に出ていたのをほとんど見た事が無かったので、そう聞いてみる。
「私は大丈夫です!いざとなったらお父さんのコネで新聞社に就職します!」
「……」
ここまで自由奔放に生きられるのはある意味才能なのだろう。
そう思いながら俺達は部屋を出た。
*
学園物なのに学校が全然舞台になりませんね、この作品。
「まあ異世界ファンタジー作品だし、学園物の舞台が学校外でもいいじゃん」
そう思って貰えるなら★とかフォローとかよろしくお願いします。
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