あるマンションの何気ない非日常
Pepper
1.103号室:友達の新しい部屋
11月27日:103号室
「お邪魔しますよー」
「荷物はそこのソファに置いちゃって」
「あいよー」
夕方の大学の帰り、相川(あいかわ)は友人の鈴橋(すずはし)の住んでるマンションに遊びに行くことになった。どうやら鈴橋は数日前にタワーマンションに引っ越したらしい。
鈴橋は最近になって、バイトの金がかなりたまったらしく、それをつかっていい物件を探していたようだ。不動産によると他のタワマンと違い、かなりいい値段で住めることになったようだ。
といっても、まだの片づけは終わってないらしく、完全には引っ越し完了とはなっていないらしい。実際に彼の部屋に入ってみると、入り口周り、他の部屋にも荷物の入った段ボールがちらほらと無造作に置いてあった。
「にしても多いな。なんでこんなにあるんだ?」
「やばいんだよな。実家から日用品送られたから、置く場所がないんだよ」
鈴橋から許可をもらい、段ボールの中をいくつか見てみると、トイレットペーパーや、食器、くしやぬいぐるみといったものが入っている。なるほど。どうやらこいつの親はかなりの過保護であるようだと相川は思った。
「とりあえず、ゆっくりしといて。今風呂場を掃除してるから、それから話を聞いてやるよ」
のんびりしている途中、鈴橋が云った。よく見ると、清掃用のゴム手袋をしている。
「そんなの後ででいいんじゃないか?もう5時半だぞ」
「頼むよー。もうすぐで終わるんだ。僕がかなりの潔癖症なのは知ってるだろ?」
そういえばそうだと相川は思い出した。こいつは超がつくほどの綺麗好きであったことを。
鈴橋はかなりこういったことにうるさく、外で着ていた服は毎日のようにコロコロのクリーナーで綺麗にするほどであった。
「だったら俺も手伝おうか?そうすれば早く終わるだろ?」
「大丈夫大丈夫ー。あとは壁をやったら終わりだし」
そういって鈴橋は風呂場の方へ消えていった。相川は早く彼に相談をしたかったのだ。相川には2年前から付き合い始めた彼女がいたのだが、その彼女は3ヶ月前に連絡が取れなくなっていた。
そんな彼女を紹介してもらったのが鈴橋だったため、彼に何度か相談していた。ところが諦めがついてしまったのか、最近はあまり相談にも乗り気ではなくなってしまっていた。
ようやく終わったのか、こちらに向かってくる足音が聞こえてきた。
振り向こうとした瞬間、肩にすさまじい痛みが走った。そうして全身に激しい痛みの赤い水が流れるのが見え、強烈な眠りが襲う。消えゆく意識の中、うっすらとした視界には、赤に染まった斧を持った暗い人影ととある一言であった。
「あーあ、また風呂場の掃除しなきゃな」
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