第3話

それから10年ほど嘉代子と連れ添い、仕事も順調、可奈子も健やかに育っていた時だった。


同期の弁護士達との飲み会に参加した真嗣は、藤次が京都でまだ独身で暮らしていると言う情報を耳にする。


それ以来、頭の中は藤次のことばかりになり、恋しい思いが一気に溢れ、いつしか嘉代子を抱くことができなくなり、真嗣はやはり、自分が本当に愛してると言える相手は男性なのだと自覚。


夏の終わりに嘉代子にそれをカミングアウトし、離婚して欲しいと懇願。

結果、家族を捨て仕事も辞め、藤次のいる京都へ行き、半ば押しかけ女房のように同居を願い出ると、藤次は深く詮索もせず、家事をすることを条件に了承。


同棲さえすれば、いつかきっと気持ちに気づいてくれる。


そう甘い考えでいたが、その思いは呆気なく砕かれる。


藤次は確かに独身だった。


しかし、恋人はいたのだ。


名前は笠原かさはら絢音あやね


白い肌に長い黒髪、整った顔立ちの美人で、藤次はすっかり彼女に夢中で、自分のことを性愛対象として見る様などかけらもなく、思いは宙ぶらりん。


いっそ言って砕けて楽になろうかと何度か考えたが、この思いの為に手放した物の多さを考えると言えなくて。

結局、二言目には友達じゃんと言って、藤次の側にいることを、真嗣は選んだ。

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