獣の姫
@yuzuha___
第1話
転生したら、異世界でした。
まさかこんな陳腐な口上を自分が述べる羽目になるとは。
まぁそんな口上を述べる時期はとっくに過ぎ去ってしまっているのだけれど。
転生したことに自覚を持った赤ん坊時代は転生したこと自体に興奮して自分の状況をさして理解していなかった。だが、普通に成長して色々と見聞きするようになってからは自分の置かれた状況に頭を抱えたものだ。だって、ハードモード過ぎるだろう。
私が転生した世界というか、住んでいる国は「
そしてファンタジーに拍車をかけているのはこの世界の動物、というか獣たちの存在だ。
この世界では獣たちと共存しているらしい。前の世界では物語でしか登場しないような獣たちがそこら辺に普通にいる。
翼を持つ狼とか尾が分かれた猫とか。
体が数メートルはある猪とか美しい羽の鳥とか。
甲羅が岩で出来ている亀とか角が本物の木で花が咲いたり実がなったりする鹿とか。
そんな獣たちが普通にいて、私たち人間は彼らと共存している。
聞いた話では神様に仕えて人間に託宣を下す神獣とやらも存在するらしい。
前世では演奏家という職業柄、ペットは飼えなかった。しかも動物アレルギーもあって動物園のふれあいコーナーでもふもふすることすらできなかった私。動物は大好きなのに一生、もふれないんだ……と悲観したまま人生が終わってしまった。
そんな私にとって最初は天国かと思ったよ。私が生まれたのは
私の一族が世界中から迫害される「まつろわぬ者」でその中でも異端な「赤目の一族」でさえなければね!
しかも私の父様は一族を治める長、つまりは頭領だ。そんな父様の第一子の私は女だけど時期頭領って訳。こんなプレッシャーのかかる立場なんていらない。甘ったれの元現代人の私が一族のみんなの命を背負える訳がない。最初はそう思ってた。いや今でもそう思ってる。でも。
「おはよう、私」
朝、目が覚めたら顔を洗う為に泉へ行く。鏡なんて高級品、こんな山奥の里にないから泉が鏡の代わりだ。
転生して早十六年。もう見慣れてしまった私の顔が泉から見つめ返す。
殆どの一族の者と同じ、白い髪に白い肌。
そして金色の瞳。
父と母どころか、一族の誰にも似ていない私だけの瞳の色。一族の者が密かに異形の目だと恐れる色。
一体、私は何者なのか。今は時期頭領という立場を手放すことが出来ない。この立場がなければ早々に一族を追い出されるに違いない。そうでなくとも、きっと綿毛のようにふわふわとあてもなく彷徨ってしまう。
あぁ、そういえば、申し遅れた。転生した元日本人、現赤目の一族の次期頭領。
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