メイドホムンクルス


 メイドホムンクルスの待つベッドルームの扉を開けると、そこにはメイド服を脱ぎかけている黒髪赤目のメイドが居た。


「ご主人様お待ちしておりま――おや、新しい子ですね。それに縛られている。今日は3P、いや、4PでSMプレイをご希望ですか?」

「おらぁ! フザけたこと言ってんじゃねーニャ! コイツの命が惜しくば降参するにゃーー!!」


 メイド服を脱ぎかけつつこちらを見て首をかしげてきたメイドに、カオルを盾にずんっと一歩前に出るミーシャ。


「れ、レナ。俺は捕まってしまった。大人しく降参してくれ」

「ああっ! ご主人様! なんということでしょう、ご主人様が人質にとられてしまいました! わかりました、降参しません……」


 大人しく立ち上がり、はだけたメイド服をスッと着直すメイドホムンクルス。

 両手の手のひらを上げてひらひらと振る。


「よーし、そのまま大人しく……ん? 今降参しませんって言ったニャ?」

「言いましたが? 私、どちらかというとSなので。縛る方が好きなんですよね」

「……こ、コイツがどうなってもいいのかニャ!?」

「いやいや降参してくれレナ! 俺がどうなってもいいってのか!?」

「大丈夫です、普通に死ぬくらいじゃ死にません。サイコロサイズになっても平気へっちゃら――そう、錬金術ならね!!」


 ばちこーん! 親指を立ててポーズを取りつつウィンクするメイドホムンクルス。案外お茶目なヤツのようだ。


「どうあっても降参してくれないってのか?」

「? そもそもご主人様は捕まっているのですか? その切れ目の入ったロープで?」

「カリーナ、バレてた! やるぞ!」

「よっしゃ、実力行使ルートだ。私の出番だね!」


 所詮は思いつきの浅知恵。カオルの捕まったフリはアッサリとバレた。


「動くな、止まれ!」


 私はメイドホムンクルスの体を空間に固定。関節の一本も曲げられない――はずだった。


「おやおや、甘くていらっしゃいますね」


 そしてメイドは後ろに居た。とっさに前に飛び距離を取る。空間魔法が効かないのか!? ホントに強いぞコイツ!?


「今のは空間魔法ですね? 大丈夫です、対策済みです――そう、錬金術ならね!!」


 ふたたびばちこーん! とウィンクするメイドホムンクルス。くっそ、余裕だなお前!……ってカオル? いつまでロープに縛られてるんだ?


「……ちょ、これ、外れないんだけど!」

「あ、ロープボロボロだったけどしっかり無事な部分で縛っといたにゃ」

「作戦聞いてなかったのかこのバカ猫!?」

「え? このくらい引き千切れて普通じゃねぇのかにゃ?」

「この猫も脳筋!? 脳筋コンビかお前ら!!」


 失礼な、私をミーシャと一緒にするんじゃない。と、私は空間魔法でカオルのロープを切ってやる。


「レナ! 大人しくお縄につけって言ってるだろ! たまには主の命令を聞けよ! メイドだろ!?」

「ご主人様。残念ですがそのお願いは聞けません。なぜなら私はSなので。ご主人様だっていつもベッドで思い知っているはずでは?」

「うぐっ」

「それはさておき、空間魔法。ということは、そちらが例のお客様で間違いないようですね」


 メイドの口が三日月のようにニィと笑った。






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