ターゲット発見。


 目の前の金髪白衣の女は、こちらを見つつ何かメモを取っていた。


「……少し話がしたい。いいか?」

「いいけど、お前が真・混沌神なのか?」

「まぁ、そう呼ばれてはいるな」


 おお。ターゲット発見。……おっと、ダメだな。この檻、空間魔法を遮断してやがる。見えてはいるし声も聞こえるが、檻の向こうに空間魔法が届かない。

 ……拠点への移動は可能。ふむ、どういう技術か全くわからんが、やるなぁ真・混沌神。


「オーケー、じゃあ話をするからちょっとこっちにこいよ。片方だけ檻の中ってのは不公平じゃないか?」

「バカ言え、勝手に入ってきたのはお前らなんだ。ちゃんと落とし穴に落ちて全裸になってるならともかく、充実した装備の不法侵入者に顔見せてるだけでも上等だろうよ。つーか改造リザードマンも惨殺してるから強盗殺人だぞ強盗殺人」

「え? ここってダンジョンじゃないの?」

「錬金王国謹製の人工ダンジョンだな。そこに倒れてるリザードマンも、頭にプロトタイプの制御装置が埋め込まれていただろう?」


 人工ダンジョン! そういうのもあるのか!

 ってことは、あの服だけをサイコロステーキにするレーザーも好きに設置できるってコト? エロトラップダンジョン作り放題とか夢が広がるぜ……


「よし、じゃあ納得してもらえたところで話をしようか。悪魔の手先さんよ」

「待て。一応、私は悪魔の手先ではない、はず、だと思うんだが?」

「強盗殺人鬼……殺モンスター鬼としてみても適切な表現だと思うが? あと敵対派閥の神様に対する呼び方ってんなら案外と悪魔は適切じゃないかな。まぁ、どっちでもいいが」


 それは確かにそう。くそう、真・混沌神に論破されてしまったわ。


「にゃーにゃー、ちょっといいかにゃ?」

「ん? どうしたミーシャ。尻を揉んで欲しいのか?」

「ん? どうしたピンク猫のお嬢さん。マタタビ嗅ぐ?」

「おめーら息ピッタリだにゃ!!……いや、神とか悪魔とか何の話してるにゃ? さっぱり話がわかんなくて詰まんねーんだけど」


 おいミーシャ。お前今まで何聞いてたんだ? というかここまで一緒についてきて今更何言ってんだ??


「仕方ないな、改めて説明しよう。……私は神様に命令されて、混沌神を名乗ってる奴を捕まえに来たんだ。神様的に恋人の名前を勝手に名乗るのは重罪らしくてな、それで前の錬金王国は滅んだ」

「そっか、カリーナ神様の使いだったにゃあ」

「は? 恋人の名前を名乗るだけでアウトとか、とんだ荒魂あらみたまじゃないか。……うーん……ちょっと前提が狂うが、許容範囲、か?」


 目を閉じて、頭を押さえる。一体何が想定外だったってんだろうか。


「えっとだな。……こっちの事情も話すか。こちらは神様からそっちのことを世界を破壊する悪魔だと聞いていて、この世界を守って欲しいと言われているんだ」

「……ん? 神様?」

「お前の方の神様とは別の存在なんだろう。もし同一存在だとしたら相当にタチが悪い自作自演だな、ハハッ」


 どうやらあちらの後ろにも神様がいるようだ。

 まぁ神様は一人とは限らないのも真理だ。同時に偽物の神である可能性もあるけれど……


「ちなみに混沌神の名前がダメだって言ったな? それを聞く分に、ますますこちらの陣営は俺をハメようとしていると確信した。……そちらに寝返りたい」


 ん? んん?


「ちょっと聞き捨てならない発言があったので確認したいんだが、いいか?」

「勿論だ、なんでも聞いてくれ」

「……今、一人称を『俺』と言ったな? まさか貴様、女装男子か!? そのおっぱいは偽物か!?」

「よりにもよってそこか!? もっと色々あっただろ!?」


 いやかなり重要だから! 私のモチベーション的に!!





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