とりあえず、何か買って話を伺いますか(ディア君視点)


 さて、そんなわけで魔道具屋にやってきました。


「見てくださいアーサー。これ、メロディーが鳴る魔道具だそうです!」

『へぇー、すごいっすね! オルゴールかぁ、姐さん喜ぶかなぁ』


 魔道具をお見舞いの品に、というのもアリですね。


「……ところで、さっきから遠巻きに色々見られている気がしますが」

『まぁエルフとドラゴンの組み合わせっすからね。見られない方がどうかしてるっすよ』

「む、確かに。……とりあえず、何か買って話を伺いますか」


 と、ちょうどそこにあったポーションをひとつ手に取りカウンターへ向かいます。

 ……麻痺ポーション。麻痺を直すのでなく、逆に麻痺させて痛み止めする用途のポーションのようです。こういうのもあるんですねぇ。


「すみません、これください」

「お、おうっ。大銅貨2枚だ」

「はい。……ところで、この町に神器があると聞いたんですが」


 正確には国に、だけど、すこしカマをかける意味で町に絞り込んで聞いてみる。


「なんだいエルフさん、破壁槌パーペキハンマーを見に来たのか?」


 いきなり大当たりです! 今日はツイてますね。


「神器は破壁槌パーペキハンマーと言うんですね」

「あ、いや。破壁槌パーペキハンマーは通称だったな。正式名称はヘパなんちゃら……まぁ美術館に安置されてるよ」


 正式名称ではなかったようです。しかし、場所が分かりました。


「美術館? 美術館があるんですか、この町って」

「ああ。美的センスってのが職人には必須だって、五大老のバー様がお作りになられたんだ」


 五大老。このテッシンの重鎮で、丁度お姉さんが仲良くなったと言っていた方ですね。

 バー様というのは、その中でもバーミリオン様でしょう。


「場所はあっちのほうだ。ドワーフ向けだから他種族には小さいかもしれんが、ま、お嬢さんなら大丈夫だろ」


 ニカッと得意げに笑う店主さん。


「いや僕男ですが?」

「おっとそうだな。俺の目は誤魔化せねぇが、そういうことにしておくか」


 うん、節穴のようですね。


「と、ところで。そっちのオオトカゲさんってもしかして……ドラゴンの子供だったりする? 鱗とかあったら売ってくれない? 1枚で大銀貨1枚、いや2枚出す!」

『おっとぉ、随分値切ってるっすねぇ? くっくっく。1枚で金貨1枚っすよ!』

「なっ!? 単語カード!? 言葉を理解しているドラゴン!?……ほ、本物かぁ!? だ、だが金貨1枚は高すぎるっ」

『なら別にいいっす、二度と手に入らないかもしれないだけっすね。いくっすよ、ご主人サマ』


 と、僕を尻尾で引っ張って店の外へ出ようとするアーサー。

 さりげなくご主人様呼びしてるのは名演技ですね。


「ちょちょちょ、まってまって。……出さないとは言ってない。その、鱗3枚で金貨2枚にならんかな?」

『んー、ま、それならいいっすよ? ぷちぷちっとな。ほれ、交換っす』

「くぅぅ……ドラゴンが商売上手だなんて初めて知った……ッ! もってけ、金貨2枚だッ」


 と、アーサーはあっさりと鱗と金貨2枚を交換しました。

 こんな簡単に金貨を稼ぐとは、恐るべしドラゴン。いや、アーサー。


「毎度ありっ! また来てくれよな!」


 店主に見送られ、魔道具屋を出ました。

 ……


「ちなみにドラゴンの鱗の相場っていくらなんです?」

『1枚で大銀貨6枚ってトコっすね。ちょっと高く買ってくれたっす! 本物から抜きたての鮮度抜群、産地直送なんでその分色付けてくれたカンジ?』

「あ、ボッタクリとかじゃないんですね」

『下手に恨まれても困るっすからね。自分たち目立つし』


 そんなこんなで目的である神器の情報を得て、僕らは拠点へと帰還しました。



 ついでに、お姉さんにお見舞いとして痛み止めポーションを贈った所、大変喜ばれて抱きしめられて汗が鼻の奥が温かくなる良い匂いだったのはここだけの話です。ええ。


――――――――――――――――

(以下お知らせ)

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そして紹介でWeb版ではなかったあのセリフを使っちゃうか…w おのれ編集N!


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