じゃあスラベェで


 納品を終えて私はディア君達と合流――する前に一旦ソラシドーレのスライムの森へと転移して、目についたメロンくらいの大きさのスライムをテイムした。


 改めてみると、トイレ用のスカベンジャースライムとは結構別なんだよね、これ。

 スカベンジャースライムは錬金術で作られた人工的な魔法生物なので、たとえるならこの天然スライムがネズミとして、スカベンジャースライムはネズミの剥製を着たロボット、みたいなカンジ。

 作り物だからこそ、テイム技能のない人でも使えるわけだね。スカベンさん。


 まぁテイム技能がないとその辺の違いもよくわからない程度の違いだったけど。



「……このスライムはあとで使うとしよう。うん」


 そっと収納にスライムを仕舞い、改めてアカハガネに戻ってディア君達と合流した。



「一応、騎獣対応の宿を取りました。アーサーのこともあるので」

「おっ、さすがディア君。気が利いてるね」


 よしよし、とサラサラの銀髪を撫でる。

 そういや人間ってテイムできんのかな……あ、できそう。流石にやらないけどね?


「そうだ、神様からテイムスキル貰ったんだよ。そんでスライムをテイムしてきたから、一応紹介だけしとくね」

「え? あ、はい。へぇ、スライムを。……こうしてみると可愛いですね」


 と、ちょこっと出したスライムをつんつんと突くディア君。

 スライムはプルプルと震えた。


「名前はなんですか?」

「うん? あー、じゃあスラベェで」

「スラベェ……まぁうん、良いのではないでしょうか?」


 とっさに思い付いただけで、すけべぇな用途に使うからスラベェという名前にしたわけではないことを心の中でそっと補足しておく。


 と、ひとつピンときた。早速視界共有とか試してみようかなと。


「ディア君ディア君、ちょっとスラベェのことお風呂で洗ってきてあげてよ」

「え、スライムを洗うんですか? というか洗えるんですか、これ?」

「まぁ洗えると思う。水浴びしてるスライムとかいるし」

「じゃあ、預かりますね。おいでスラベェ」


 と、ディア君が呼ぶとスラベェはディア君の手に移っていった。


「私は部屋で休んでるからねー」

「はい。お風呂いただきます」


 私は部屋に向かった。……さて。じゃあ視界共有しようか。

 ……ちゃうねん。最近ディア君のこと可愛い女の子に見えすぎてて脳がイケるとバグってきてるので、ディア君のディア君を見てリセットする計画を実行しようと。ね?


 これはディア君との適切な距離を保つために大事な儀式なんだよ。うん。


 ベッドの上で、きゅっと眼を閉じ横になる。えーい視界共有発動ぉー。




 ……お。風呂場の脱衣所だな? これはスラベェの視点。成功だ。

 スライムの眼ってどうなってんだか分からんけど、しっかりフルカラーで見えている。まるで360°VR動画のよう。


『ほら、スラベェおいで』


 ――ッ!! ディア君、ち、ちち、おっぱ、いや、その、先端っ! 見えてるっ!

 腰にタオル巻いてるけど上はもろだしだよぉ!


 はっ!?

 いや、ディア君男の子だから合法なんだよ! なに動揺してんだ私っ!!

 男の乳首が見えたところで何の問題があるだろうか、いやない。ないはずなんだ……落ち着け私……ッ!

 そう、今日はこの脳のバグを正すためにディア君のディア君を見るんだっ!


 と、視点が勝手に動いてディア君のすべすべな腕に乗った。

 うーん、というか視界共有だけのはずが聴覚や触覚まで反映されてるぞ? まぁいいか。


 あ、身体あらってくれるのねディア君。よ、よろしくお願いしまーす。



 ……あー、つるんっつるんって泡乗せた手で全身洗われるの気持ちえぇー。

 と、その隙にディア君の隠された場所を見……見え――


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