多少の無理は通るのよ


 ロゼッタの町に着く。

 ロゼッタの町は山のふもとにあり、土レンガや土を盛って固めたような街並みが広がっていた。全体的に薄い赤茶色だ。


 門ではアイシアにヒーラーに化けてもらってアーサー君を従えさせ、問題なく町に入ることができた。

 手紙も届けて報酬に銀貨2枚を後払いで貰ったよ。お小遣いっていいよね。

 兵士さんは小さくなったとはいえドラゴンを見て及び腰だったけど、きちんと従魔登録済みのドラゴンだと伝えるとおっかなびっくりだけど対応してくれた。



 え、従魔登録はどうしたかって? したよ、カルカッサで。ヒーラー氏が。


 私、というかヒーラー氏はあそこのギルド長にはちょーっと顔効くからね!

 多少の無理は通るのよ。


 従魔登録の登録日についてもちょいっと融通してもらったりしたのでアリバイも完璧だ。

 まったく、意外と細かいんだよなギルドカードの記録。これ作ったやつ絶対転生者とか転移者とかで日本人だぞ。



 んで。

 私はディア君とアイシアと一緒にロゼッタの町を歩く。

 折角だしこの国出身のアイシアに町の見所を尋ねてみようじゃないか。


「アイシア、ロゼッタの町ってなんか見所ある?」

「んー、そんなないですね。たしかにこの国では大きい方の町ですが、首都と比べたらほぼないです。しいて言えば、国境付近だからパヴェルカント王国のお酒が手に入りやすい、くらいかと」


 なるほど、んでそれもパヴェルカントから来た私達にとっては特に珍しいモノでもないと。


「全体的に赤土っぽい光景は、やっぱ違う町に来たなーって感じでいいんだけど」

「それ、この国の基本なところなので、この国に滞在するならすぐ見飽きると思いますよ」


 そうか、そんなもんなのか。

 ついでに言うと首都の方はだいたいドワーフサイズになっているため、身長の高い人はドアとかを潜るたびかがむ必要が出てきて窮屈なんだとか。

 私くらいなら特に不都合はなさそうとのこと。


「とりあえず冒険者ギルドに寄って配達依頼達成させて、商人ギルドでも覗いてみようかなぁ」

「行商人としてはここでドワーフの『ジュース』を仕入れてパヴェルカント王国へ戻って売る、ってほうが利益が出るんじゃないかと」

「それはお酒の免許ないから無理だね。ドワーフの国ではセーフでもパヴェルカントで逮捕されちゃいそう」

「あ、そうでした。すみません差し出口を」


 ドワーフの国では飲み干せるお酒は『ただの味付きの水』だっけね。

 まぁそれはそれで買っておいてもいいけども。


「あ、でもアイシアの言う通りここでは『ジュース』なんだから、ここでパヴェルカントの『ジュース』をたっぷり買っておいて、それをこの国でばらまくとかはアリかも!」

「おお、それは良い考えですあるじ様!」


 賄賂用ということであれば複製品を作ってタダで渡すというのもやぶさかではない。

 売るんじゃないなら複製してもセーフ!

 それに贈ってすぐ胃袋へ消えていくのだから、証拠も残らないってなもんよ!


 (ただしそもそも神様でもなきゃ複製品かどうかの違いは判らない)



 というわけで、念には念を入れてハーフドワーフでお酒にも強いアイシアに賄賂用の酒、もといジュースを買ってきてもらうことにしたので、この町で一泊することにした。


 宿は……うん、取る必要ないかなぁ。一泊だし。ドラゴン連れ込んでいい宿を探す方が面倒くさい。

 野宿して節約しましたとか言っとこう。


 まぁ特にそれらしい特徴のない町、ということでロゼッタの町は一泊だけでサクッと通り過ぎて次の町を目指そう。

 一応今回の目的は『神器』なので、目指すのはとりあえずこの国の中央、首都だね。


 途中にはアイシアとサティたんの故郷もあるらしいので、色々お楽しみはそこまでとっておこう。

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