こちらの言葉は分かるんですよね?
「ドラゴンを拾ってペットにするって……カリーナお姉さんの規格外も大概ですね」
「今更ですよディア様。あるじ様はなんかこう……凄いとしか言いようがないので」
さしあたってディア君とアイシアにドラゴンを紹介してみたところ、このようにどこか達観したような反応が返ってきた。
よかった、「元居た場所に返してきなさい!」とか言われなくて。
『うっす! よろしくお願いします、パイセン方!』
「よろしくだって」
私が挨拶を通訳する。ドラゴン語スキルを覚えたことは二人にも言った。
「あ、はい。こちらこそ。なんかこう、大人しいですね。僕の知るドラゴンはもっとこう、災害というイメージだったので。このように大人しく頭を下げられると驚きます」
「あるじ様、このドラゴン、なんという名前なんですか?」
アイシアに聞かれて、そういえば名前を聞いてない事に思い至る。
「ねぇ、名前だって。なんてーの?」
『自分の名前は(翻訳不能)っすね!』
「ん? なんて?」
『(翻訳不能)っす!』
ギャオギー、みたいなノイズ音でしか聞こえない。
いや、正確にはそこだけドラゴンの鳴き声そのままのように感じる。恐らく名称に対応する単語がないから翻訳できないのだろう。
「どうやら私たちの言葉にはない言葉でそのままは分からないねぇ。適当に呼び名つけちゃっていい?」
『うっす! 姐さんにつけてもらえるなら何でも受け入れるっす!』
「じゃあポチとか? ウチの国でよくある犬の名前でね……いやきょうびポチもそんな居ないか……ちょっとレトロがすぎるか?」
『あの、せめてドラゴンらしい名前がいいっす……』
なんだよ、要望があるなら最初から言えよもう。なんでもとか言いやがって。
「ディア君、なんかドラゴンらしいカッコいい名前つけてやって」
「えっ! 僕がつけちゃっていいんですか?」
「うん、良いって言ってる」
『え!? 自分、姐さんにつけてもらいたい――』
「私が、良いと言ってるんだから文句はないよね?」
『――ないっす! 姐さん! よろしくっすディア君さん!』
びしっと姿勢を正すサンダードラゴン。
「僕、ドラゴンの名前とか初めて付けますよ! どうしよ、ば、バハムートとか?」
『まってディア君さん、それ叔父貴の喧嘩相手の通称だからまって』
「うーん、既存のドラゴンの名前と被るとドラゴン社会で問題がありそうだから、そういうのは避けてあげて」
「あ、了解です。……えっと、何か問題があったら首を横に振る感じでお願いできます? OKなら縦に振ってください」
『うっす! よろしくお願いするっすディア君さん!』
こくこくと頷くサンダードラゴン。
早速仲良くなれそうで何よりだね。さすがディア君だ。
「あるじ様。このドラゴンさん、こちらの言葉は分かるんですよね? なら、あらかじめ板にこちらの言葉を書いておいて、それであるじ様以外とも会話できるんじゃないでしょうか」
「お、それ採用。アイシアは賢いなぁ」
「えへへ……」
というわけで、ディア君がドラゴンの名前を考えている間、私とアイシアは単語帳を作ることにした。
「うーっす、風呂入りに来たわ……ぁあああ!? どどどど、ドラゴンーーー!? おいカリーナ! てめ、何拾ってきてやがる!? こんな危なっかしいやつ元の場所に返して来い!」
あ、マシロさんいらっしゃい。あとある意味期待通りのリアクションありがとう。
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