人に話すとアイディアが纏まる事ってありますよねぇ



 私カリーナちゃん。マイ荷車にオーク2体とゴブリンの耳を載せてえっちらおっちらソラシドーレへ帰還したの。

 いや、2体でもかなり重いわ。空間魔法なきゃ荷車あっても運べねぇわコレ。

 もし狩った分全部乗っけてたら余裕で荷車壊れるわ。


 というわけで、冒険者ギルドの方にオーク2体丸々とゴブリン30匹の討伐証明を納品。

 常設の討伐依頼が出ていたのを含めて、ゴブリン30匹は銀貨1枚。オーク2体は大銀貨1枚になった。オーク一匹で銀貨5枚分だ、うまうま。


 合計銀貨11枚分の稼ぎだ。

 しかも私の収納空間には、まだまだ大量のオークが眠ってるんだぜ。数回に分けて流せば幾らになるだろうな?


 ……なんだろう、商人より冒険者の方が稼げる気がするぞ?


「よぉカリーナ。ソロでオーク狩ってきたのか……荷車大丈夫だったか?」

「あ、丸太同様に軽くしたんで大丈夫っすよブレイド先輩」

「おお。アレってオークにも使えんのか。ホント便利だな」


 ほへー、と感心してるブレイド先輩。

 そうだ、ここはそっとオーク牧場じゃなかったかの探りをいれてみよう。

 私はすっとぼけたフリをして聞いてみる。


「なんならまた荷車借りて、今度は一緒にオーク狩り行きます? 30体くらい集まってるとこありましたし」

「……は? ちょっとまて、お前、今なんつった?」

「あー、やっぱり手を出したら不味いとこでしたか……?」

「おいソフィ、地図借りるぞ! その30体ってのは、どこで見た?」


 受付嬢さんから地図を借り、テーブルに広げるブレイド先輩。私は素直にオーク集団を見かけた場所をつんと指でつつく。森の結構奥の方だ。


「……っ、おま、そんな奥まで行ったのか!? しかし、30体のオークか……進化個体が出ててもおかしくないな」

「それってあれっすか、ナイトとかジェネラルとか?」

「ああ。30体ならキングは出てないだろうが、ナイトはいそうだな。いや、カリーナが見たのが一部だとしたら楽観できないか。もしキングが出てたらヤバいぞ」


 あ、ヤバかったんだ? ってことは狩っても良いやつだったらしい。よかった。


「ヤバいんすか?」

「ああ、ソラシドーレの方向へ向かってきたら町が壊滅してもおかしくない。キングを潰さない限り、オークが増え続けてスタンピードを起こすぞ」


 ふむふむなるほど。

 どうやら私は人知れず町の危機を救ってしまったらしいな!

 あ、でもキングかどうか確認しとこう。


「先輩、先輩。ちょっと裏来てもらっていいっすか?」

「あ? なんだカリーナ今大事な……おい、なんか嫌な気がしてきたぞ」

「まぁまぁまぁ。私と先輩の仲じゃないっすか。内緒話しましょうよ。悪い話じゃないんで」

「……行くけどよぉ」


 というわけで、ギルド近くの裏路地。人気のない廃材置き場にやってきた。

 そしてリュックからキングと思しき小柄なオークを取り出す。あと王冠。念のため持ってきておいてよかったー。


「キングってこれっすかね」

「……おーう……」


 目に手を当てて天を仰ぎ見るブレイド先輩。


「なぁ、これ……えーっと。その、ギルドに報告するか? 頭が追いつかないんだが」

「なんか面倒事になりそうなんでこうしてコッソリ相談してるんじゃないすか!」

「だよなぁ」


 そこらへん考えてくれるブレイド先輩だって信じての相談だよコッチは。


「お前はどうしたいんだ? 英雄になるか? Aランク冒険者もいけるぞ」

「私女なんで英っておかしくないっすか?……冗談はさておき、何事もなかったことにして、のんびり行商人続けたいんですが……あ、そうすればいいのか」

「おい、人に相談しておいて勝手に解決すんなよ」

「人に話すとアイディアが纏まる事ってありますよねぇ」


 そう。なかったことにすればいいのだ。オークの異常繁殖とかを!

 こっそり間引いて収納空間に仕舞えば無かったことになる!


 そんで、もしバレたらヒーラー氏に功罪全部押し付ければいい!!


 みんなはスタンピード起きなくて幸せ、私はお肉や魔石が貰えて幸せ、ついでにバレなくて幸せ。

 なんて完璧な解決法であろうか。間引かれるオーク以外はみんなハッピーな円満解決である。



「その、なんとかなりそうなのか? 俺が手伝えることがあるなら手を貸すが」

「これがキングだって分かっただけで十分っす――あ、森のオークこっそり間引いた方がいいですかね? 30体くらい集まってると危ないって事だし」

「そうだな。できるなら……できるのか? できるのか。そうか」

「そんなら適当に間引いときますね。ホントは100体くらい居たんで……」

「……開いた口が塞がらねぇってのはこういう事なんだなぁ」


 頭をバリバリと掻きむしるブレイド先輩。


「その、なんだ。町を救ってくれてありがとよ、カリーナ」

「お安い御用っすよ」


 親指を立ててニカッと笑うと、ブレイド先輩が顔を赤くした。

 おい、惚れんじゃねぇぞ。



 そして私の30体くらい見たという発言は「よく聞いたらゴブリンと見間違えていたようだ」と、無かったことになった。

 平和でなによりである。(ただしオークの平和は除く)

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