港町ヴェーラルドの商人ギルド



 私カリーナ、裸の付き合いでオバちゃんたちは大体トモダチ。若い子もちらほらいたんだけどなぁ、みんな遠巻きにしてたなぁ。

 なんでぇ? 下心バレてた? ぷるぷる、私悪い女の子じゃないよぅ。

 お酒の力を借りねば女の子と仲良くはなれぬというのか……

 いや、おばちゃん達が女の子じゃないとは言わないけどさ。うん。



 と、いうわけで。お風呂ですっかり綺麗になった私がやってきました商人ギルド!


 オバちゃん達にも「ほらココしっかり洗わないと!」「耳の後ろ忘れがちだからねぇ」「なんだ尻尾は無いのかい。てっきりアレな時期の獣人かと」とか言われつつばっちり体中を洗ったので、もう体臭を気にする必要はないってなもんよ。

 少なくとも今日明日くらいは。


「さーて、お酒買ってくれるとこあるかなー、そしてローション仕入れねば」


 サティたん曰く、商人ギルドに聞けばお酒を売れるお店とかを教えてくれるらしい。

 ヴェーラルドなら少し利益が出る(経費込み)し、ローションも十分買えるだろうとの事だ。どのくらい買えるかなー。


 そんなワクワクした気持ちで商人ギルドに足を踏み入れたところ、中に海賊が居ました。

 んんー?


「あれ、ここって商人ギルド……ですか?」

「そうだが」


 嘘ぉ!? バンダナを巻いた船員やら、ドクロマーク付きの船長帽を被った厳つい眼帯のオッサンやら、どうみても海賊なんだが!? どう見ても海賊のアジトなんだが!?

 あるいは海賊に制圧された後の酒場なんだが!?


「あー……お嬢さん、ヴェーラルドは初めてか?」


 私が呆気に取られていると、職員らしい男の人が話しかけてきた。


「あ、はい。初めてです」

「なら今お嬢ちゃんは『まるで海賊のアジトだ』と思ったことだろう」

「ええ、まぁ」

「大体合ってる。海賊は海の商人の一種だしな」


 海賊――私掠船乗務員。交易許可のない船から積み荷を奪うことを生業とする者たち。なんと国の許可を得ている『公務員』であるらしい。


 そうなのか……じゃあ勝手に海賊を襲ってお宝奪うとかしちゃだめなのかぁ。


「丁度彼らも一仕事終えたところでね。興奮状態だから近づかない方が良いよ。それで何の用かな」

「あ、はい。酒を売れる場所とローションを仕入れられる場所を教えてください」

「酒免許は無いってことだね、了解。ローションは粉末のかい? 酒問屋は――」


「おう! 酒か! 俺が買ってやろうか! 丁度酒が欲しかったんだ」


 私と職員さんの話に割り込んでくる海賊の人。船長っぽい偉そうな帽子に眼帯だ。

 この世界の人よく絡んでくるんだけどなんなん? あ、私が美人だからか?


「職員さん、この人酒免許持ってます?」

「……持ってないね。3本までなら個人取引としていいところだけど」

「じゃあ3本だけかなぁ。代金は――」

「ほらよっ!」


 そう言って、ちゃりんちゃりん、と銅貨3枚を投げてくる。

 床に散らばる3枚の銅貨。


 あん?


「さっさと拾えよ。ああ、お前を一晩買ってやってもいいぞ」

「職員さん、あの人お金落としましたよ。それとも喧嘩を売りに来たんですかね」

「ちょ、ゴメスさん!! ギルド員同士の揉め事は御法度ですよ!」

「いいじゃねぇか。ローションとかも聞こえたぞ? お前が使うんだろ、相手してやるよ」


 そう言って酒臭い息で肩を抱こうとしてきたので、私はするりと身をかわした。

 せっかく風呂屋で綺麗にしてきたのに汚い手で触るんじゃねぇよ?


 まったくブレイド先輩とは大違い――いや、よく考えるとブレイド先輩もこんな感じだったっけ? うーん、このゴメスってのもいい人だったりするんだろうか……


「フッ、私を買いたければ金貨100枚持ってくるんだな、酔っぱらい」

「100枚か? そうだなぁ、俺の女になるなら考えてやらんでもないぜ」


 ブレイド先輩を撃退した私の決め台詞に海賊ゴメスがそう返す。

 マジかよ。海賊そんな稼げんの?


「いやまぁダメだけどな。めっちゃケチみたいだし」

「は? 俺様のどこがケチだって?」

「頭も悪いの? そこの銅貨3枚とかドケチの証明じゃん。そんなちっちぇえ男に靡く女なんていねーわ」


 しかも「やる」じゃなくて「考えてやる」だし。結局くれないやつじゃん。


「だ、だ、だ、誰がちっちぇぇだと!?」

「お? この程度で怒っちゃう器の小さい男がいるのかなぁー? どこどこー? 小さすぎて見えないヤツぅー? 小指よりちいさいヤツなんておりゅぅー?」

「ーーーーッ!!!!」


 あらあら、ゴメスさんお顔が真っ赤ですことよ?

 そんなに私が小指クイクイ曲げる仕草に興奮しちゃった?


「ちょ、あなた何煽ってるんですか!」

「えー? やだなぁ職員さん。これで怒るのは自分の器が小さいと認めるってことでしょ? 器の大きい人なら全く関係ない話だって。ん? まさか職員さん、ここにそんな器の小さい人がいるとおっしゃってる?」

「…………いえ、その!?」

「フーッ、フーッ……!」


 ごめんねー、職員さん。巻き込んじゃって。

 精一杯呼吸を整えてるゴメス。

 ここで怒ったら小物って自分を認めちゃうことになるもんねぇ。フフフ。



――――――――――――――――

(★評価入れてくれた人、コメントくれた人、いいねしてくれた人、

 みんなありがとうございます!

 特に先日あとがき部分追加した時のは、おかげで翌日のPV数がなんか倍に跳ね上がってました。多くの人に見てもらえてるっぽいですね! いえいっ)

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