PKK(人狩り狩ろうぜ! の意)



 私カリーナちゃん! 悪を成敗してお財布をゲットしたの!

 ほら、ゲームだとよくあるでしょ、敵倒すとお金落とす奴。あんな感じ。


「しっかし、こいつ等シケてんなぁ……全然金持ってねぇじゃん。あ、だからこんなことしてんのか」


 ……おっと、これはもはやどっちが悪役か分からないセリフだったわね!

 いけないいけない。カリーナちゃんは正義の美少女なのだ。

 正義ってのはいいぞ、正義の名目さえあれば人はどこまでも残酷になれるぜ。


 お財布Bを収納空間に仕舞って、再び別の路地裏へと千鳥足っぽく歩いていく。


「待ちな姉ちゃん――金、持ってんだろ? ちょっと恵んでくれや」

「じゃなきゃ明日の朝日も拝めねぇぜ?」

「おら! ジャンプしてみろジャンプ! おっぱい揺らせ!」


 お財布C、D、Eが現れた! どうやらこの町の裏路地はそれぞれ縄張りがあるらしいね。そして、みかじめ料は金庫どれいしょうに入るっぽいよ?


 なので、お財布ABに聞いた縄張りを全部巡った後に金庫へGOだ!


「……き、きえたく、ないっ、たすけ――」

「次いってみよー!」


 お財布達を収納空間にお片付けし、どんどん次の縄張りへ。

 にしても、君たち本当にワンパターンだねぇ。少し飽きてきたよ。



「おい木こりの姉ちゃん。財布だしな」

「先輩が良い事を教えてやるよ。稼ぎの半分は先輩に渡して面倒を見てもらうんだぜ?」


 おっ。これはチンピラ冒険者ですね! 少し味付けが変わって良い感じ。ラーメンの味変の感覚だね。

 まぁこっちのやることは同じだけど。

 味変してもラーメンはラーメンなのよ。食べ方が変わるわけでもないのよ。



「ブレイド達とは別れたんだろ? 面倒見てやるからよぉ。な?」

「俺らの宿に来いよ。あんなお人よしのクズよりも気持ちよくしてやっからよ」


 あ? ブレイドパイセンの悪口言ってんじゃねーよ。


「おい。私は陰口が嫌いなんだ、言うならちゃんと本人に言ってやれ! 飲んだくれで金にだらしねェ情けないヤツだってよぉ!」

「……お前のそれは陰口じゃねーのか?」

「正論言ってんじゃねぇぞチンピラ冒険者がよぉ! 今ここで揚げ足取りしていいのは私だけって決まってんだ! 黙っとけカスが! ゴブリンにケツからナイフ刺されてもだえ苦しむのがお似合いのザコがよぉ!」

「おいこいつ相当酔ってんぞ」

「だな」


 え、素面ですが? あらやだ、ちょっとチンピラ共の汚い口調が移っちゃってたみたい。カリーナちゃん反省っ!

 お猿さんの言葉じゃなくて、もうちょっと人間らしい奇麗な言葉をつかわなきゃね。


「ちなみにお前ら何ランクなんですか? あ、わかった。Gランク! ね、当たりでしょ? だってどう見ても弱そうなんだもの!」

「Dランクだよ! くっそ生意気なメスだなこいつ」

「こういうのを屈服させんのが溜まんねぇとはいえ、ちょっと限度があるな……首絞めときゃ黙るか?」


 こめかみに青筋たててピクピクさせてるチンピラ共。効いてる効いてる。

 ……つか、Cランクになれないのにブレイド先輩のこと悪く言ってたのかぁ。人格に問題ありそうだもんなこいつら。


「おい。Eランクのザコに先輩を敬うってこと体に教えてやろうぜ」

「おうよ、実力なら俺らはBにだって相当すんだからな!」

「ププ、嘘乙! お前らがBランクだったら私はSランクだぁ! ざーこざーこ!」

「「ぶっ殺す!!!」」


 はいきたー。殴ってきたので拳が当たった瞬間に収納空間にお片付け、完了!

 明らかにマッチポンプな拉致監禁。これが一番正当防衛だと思います。



「これでいち段落ってとこかな?」


 お財布Bから一通り聞き出した縄張りは回り終えた。

 結局お財布たちの中身は合計で銀貨5枚程度と非情にシケた内容でした……


 こりゃ普通に木こりしてた方が稼げるな、そりゃ誰も手を出さないわけだ。

 なんつって。



 ……ってか、そんなことより収納空間に入れたやつらどうしようかなぁ。

 かれこれ15人は越えてるから、リュックの中に詰め込んでますっていうのも無理があるしなぁ……


 これでチンピラが女の子とかだったら多少はテンションも上がるんだけど、なんで全員男なんだよ。ちくしょうめ、使用済み靴下製造機にもなりゃしない。


 路地裏でチンケなカツアゲしてる程度のやつらだ、別に賞金首ってわけでもないんだろうしなぁ。売るにしてもどこへ? ってなるし。奴隷商とも繋がりがあるんだろ?

 かといって「じゃあ殺すか」っていうのもなんかなぁ。 


 他は知らんが、私は別にこいつらにそれほどの事されてねぇし。

 いちいち罪状を聞いて適した罰を、なんてのも面倒くさい。叩いて埃を出すのは私の仕事じゃないよねぇ……




 あっ。良い事を思いついた。全員詰め所にぶち込んでやろう。

 もちろんただぶち込むだけじゃつまらない。

 悪事を白状しやすくなるように先にちょっと・・・・脅してあげよう。


 『悪い事すると神様こわいひとがやってきて酷い目にあうぞ、だから大人しく自首しなさい』って脅しをかけ、あとは現地の人にお任せするのだ。



 ずばり、作戦名コードネーム『NAMAHAGE』!




 私の手間も省けるし、無駄に殺したりされたりしなくてもいいし、司法の手柄にもなる。

 三方良しってやつだね!


「となると、脅しをかける場所はあそこがいいな」


 そんなわけで私は転移を使う。

 向かう先は、つい最近神様が大暴れした場所――錬金王国跡地だ。


 あそこならやりすぎても、もう周りに被害は出ないだろ。





 ……尚、全員を脅すのに時間がかかって、結局この日金庫どれいしょうに顔を出すまで行けなかったのはここだけの秘密だ。

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