人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい？誰がんな事すっかバーカ！

第74話 聖女の再会

「そういう事ね。ミザリー、この子は正真正銘アリエンナちゃんよ。」

「アンリが言うなら間違いないな。」

　納得するの早過ぎません？

「本当に焦っちゃったわよ。ギャモーさんが危ないと聞いて……魔界が滅びるかと思ったんだから！」

「何故焦るんだ？」

「ギャモーさんが悪魔に殺されたら魔界が滅びるのよ。」

「前に言ってた話か。あれはアリエンナの冗談だろ？　いや、冗談であって欲しい。」

　ミザリーさんってば、私が適当な事を言ったと思ってるのね。

「冗談じゃありませんよ？　跡形もなく魔界全土の生命体を滅ぼします。当然邪魔する奴も滅ぼします。あとは悲し過ぎて人間界も少し滅びるかもしれません。具体的には国一つ分くらい。」

「……アリエンナちゃん、瞳孔が開いてるから一旦抑えて。」

「すまん。軽率だった。」

　ミザリーさんが謝ってくれた。

「大丈夫ですよ。ミザリーさんはギャモーを守る為にわざわざアンリさんに知らせてくれたんですから。」

「そ、そうか。」

「はい。」

　どうもミザリーさんは緊張しているようだわ。もしかすると、久しぶりに会った姪と何を話して良いか分からないから？

※恐ろしいからです

「それにしても、魔界の騒動はもう解決したのか？」

「勿論よ。ここにいるアリエンナちゃんが大活躍だったんだから！」

　そんなに褒められると照れちゃうな。

「それは是非聞いてみたい。」

「俺もだ。」

「私も聞いてみたいです。」

「じゃあ、特別に教えちゃおっかな。どこから話そうかしら？」

　私とお母さんの活躍を迫力満点に擬音つきで説明してくれるアンリさん。

　それはまるで、実際にその場で体験しているかのような不思議な感覚に陥ってしまう程だった。

　ちょっと待って。何それ？　その音どうやって出してるの？

　凄く上手い。

　臨場感が伝わってくるような、信じられない表現力に何だか私までワクワクしてくる。

　私はアンリさんの説明に感動してしまった。

「というワケで話を纏めると、アリエンナちゃんとアリエーンが協力して魔神一体を、アリエンナちゃんが魔神を二体、アリエーンが魔神一体を単独で撃破。信じられないような大戦果だったわ。」

　三人は途中まで楽しそうにしていたのに、後半はポカンと口を開いて話を聞いていた。

「あー…私の認識が間違っていただろうか？　魔神とは魔界の最高戦力、たったの五体しかいない強者だと記憶していたが。」

「間違ってないわ。」

「実は1級悪魔とそれ程差がないとか……。」

「今のアリエンナちゃんの状態が大体魔神級ね。」

「もしかして、そこから更に強くなったりなんて……。」

「するわね。アリエンナちゃんは今の状態から数倍は強くなるわ。」

　ミザリーさん？　何で後ずさるの？

「そうか。お前たち親子が大概オカシイのは分かった。魔界はどうでも良いが、人間界を滅ぼすのはやめてくれ。」

「魔界だって滅ぼされたくないわよ！」

　私の伯母さんは案外ドライなようね。

「なぁ。俺は死なねぇから魔界を滅ぼす必要はねえんだぜ？」

「それなら安心です。」

「ギャモーさん。出来ればずっとアリエンナちゃんと行動して。お願いだから。」

　変なの。私とギャモーは新婚なんだから、今回みたいな事が無ければずっと一緒。

　新居に引っ越したらお風呂やトイレだって一緒に決まってるのに。

※決まってません

「任せてくれ。なんたって結婚したんだからな。」

　ギャモーはやっぱり分かってるわ。家はどこに建てるのが良いかしら？

「取り敢えず魔界での騒動は解決済みだから、これ以上の修行は必要ないわ。」

　そうね、魔界は強い悪魔がたくさんいるから危ないし。必要ないなら二人を連れて行かない方が良いに決まってるわ。

「折角ここまでやったんだ。もっと強くなりてぇんだが？」

「私もです。」

「それなら良い方法がありますよ？」

　私は思いついてしまった。

　上手くいけばお手軽簡単に強くなる方法を。

「どんな？　アリエンナちゃんが修行の相手になるの？」

「いえ。相手に魔力を流し込んだらもっと強くならないかな……って思いまして。魔力を流し込む事で相手の魔力量が増えたりしませんか？」

「まぁ、そうね。魔力の量は増えるけど、だからと言って魔力量が強さに直結してるわけじゃないわよ？」

　アンリさんの説明では、相手に魔力を過剰に流し込むことで魔力を保持する器が広がり、結果として相手の魔力量が増えるのだそうだ。

　しかし魔力が増えたところで魔法は練習しないと覚えられないし、増えた魔力が馴染むまでには何年も鍛えなければいけない。

　魔力が増えても急激に肉体能力が向上するわけではないのだ。

　しっかり鍛えないと、魔力を多く持っているだけの大して強くもない人物が誕生するというあまり意味の無い事で終わってしまうらしい。

　でも私の考えでは、人間は身体強化を使えるから魔力量が増えればイコール強さに繋がると思う。悪魔と人間の体質の違いから、アンリさんはその事に気付いていないのかもしれない。

「じゃあちょっとやってみますね。」

　私はギャモーの手を取り、魔力を少しずつ流し込んでいく。

「おお？　なんか一気に来たぞ？」

　あれ？　そんなにたくさんは送ってないんだけど。

「なぁ。これって大丈夫なのか？　なんかこう……無理矢理こじ開けられてるような感じがするんだけどよ。」

　え？

「それで良いの。むしろ無理矢理こじ開けるような感覚が無ければ流し込む量が足りてないという事なんだから。」

　これで良かったみたいね。ちょっと焦っちゃったわ。