第14話 [寝ている間にやめてほしい]
――キーンコーンカーンコーン
「終わっちゃ〜〜!!」
「終わったか……」
無事に六時間目の授業も終わり、俺は一息ついた。
「あ、夏墨、悪いが今日は先に帰っててくれ。委員会があるから」
……って、あれ? なぜ俺は夏墨と帰ることを前提に話しかけたんだ? くっ、小学校の頃の癖が抜けていないみたいだ。
「んー、今日はもともと一人で帰る予定だったよ。なんせ、モデルのお仕事があるんで!」
「モデル!? すごいな夏墨!」
「えっへへ〜♪ よかったら雑誌買ってね〜。今夜はゲームしたいから押入れから出しといてね! バイバーイ!」
「じゃあな。……ってかうちに来るんかい!」
やれやれだぜ。
バッグを持って教師を立ち去る夏墨を見ながらそう思った。
「あ、透くん。委員会のお仕事は先に行っててくれませんか? 少し用事があるので後から行きます」
「ん、わかった。じゃあ後で」
「はい」
悠人を問い詰めようと思っていたのだが、もうすでに部活に逃げていったようだ。明日やってやろうか。
そんなことを思いながら、俺もクラスメイトから逃げるように図書室に向かった。
「よし、誰もいないな」
この学校では、図書室がまるで人気がない。ので、図書委員の仕事もすごいゆるい。カウンターに座ってるだけで大丈夫なのだ。
「ふわぁあ……。なんか眠いなぁ」
カウンターにだらんと突っ伏し、うとうととし出した。
健康的な食事を食べさせられ、濃い日常を送っているから疲れがたまっているのだろうか? ま、でも心の底から嫌だというわけではないからいいが……。
考え込んでいたらさらに眠気が増してきた。そして俺は、つい眠ってしまった。
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「お疲れ冬雪。もういって大丈夫だ」
「わかりました」
「遅れました透くん。今日も誰も来ていな……」
ガラガラと扉を開けると、そこにはカウンターに突っ伏して眠る透くんの姿があった。
「(と、透くん可愛いです……! 本来ならば仕事中に眠るなんてダメですが、まあ……誰もこないですし少しくらいなら……)」
カウンターに入って透くんに近づき、ジーーッと寝姿を見つめた。
透くんと初めて出会ったのは中学二年生くらい。中々長い期間を共にしているが、透くんのことを全然知らないことをわからされた。
「(透くんのことをもっと知りたいです。何が好きなのかとか、いつも何してるのかとか……。好き、だから……)」
隣に座って、透くんの髪を撫でてみたり、手をにぎにぎしたりしてみた。
そして透くんの手を掴んで、自分の頰に当てて暖かさを感じたその時だった。
「な、何、してるんだ……!?」
透くんが目を覚まして、顔を真っ赤にして私の方を見つめていた。その顔も愛おしいと思えてしまったけれど、今はそんなことを思っている場合ではない。
「あ、えっ、と……手! 手を、握っていました……」
「見たらわかるが……」
「ちが、違うんです! えっと、その……し、死んでいるか確認をしたんです!」
「えぇえええええ!?!?」
我ながらとんでもない誤魔化し方をしてしまったと後悔をしている。
「その……不安だったので……」
「あ、心配してくれてたのか……。ま、まあありがとう……?」
「えっと、どういたしまして……」
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