#5 拾った命は誰のものか
私はとある病室に来ていた。山本稔君の部屋よ。そう、あのイケメンの良い子ちゃん。
あの事故から3日経つので、そろそろ目が覚めるかな、と思って。
なんで仕事が片付いたはずなのに、わざわざ彼の様子を見に行くのかって???決してイケメンが苦しみ悶えてる姿を見たい訳じゃないわよ!?
だって、気になるじゃない?若いのにあんな達観した性格してるなんて。
人間の若い子ってもっと自己中で、キャピキャピしてるもんじゃない?あ、キャピキャピしてるのは女の子かオネエくらいか。ほっといて!!!
だからちょっと様子を見ようと思ったのよね。苦しみ悶える姿を見るのはついでよ!!どうせ死神の姿なんて死ぬ間際の人間にしか見えないし、少し覗くくらい良いでしょ!
仕事を怠けて見に来てるわけじゃないわよ?ちゃんと自分のノルマはこなしているんだから!出来るオン・・・男は違うのよ!
あ、丁度目が覚めたみたい。こないだは夜だったからぼんやりとしか見えなかったけど、昼間の明るいとこでハッキリ見てもやっぱりイケメンねー、、、うっとり。
側で座って見守ってるのはお父さんかしら?あら、お父さんもイケメンね。あんな大きな子供がいるように見えないくらい若く見えるし。
「稔!目が覚めたか!?」
「お・・・じさん?俺・・・生きてるんですか?」
「そうだ!心配したんだぞ!・・・医者!医者呼ばなきゃな!」
そう言って、おじさんと呼ばれた男性はナースコールを押した。
むむむ。呼び名から察するにどうやら稔パパでは無いらしい。
「山本さん、どうかされましたか?」
「稔が、稔が、、、稔の意識が戻ったんです!!!」
「わかりました!医者を連れてすぐ行きます!」
おじさんと呼ばれた男性と看護師のやり取りから程なくして、医者と看護師がやって来た。
医者は心音を聞いたり瞳孔を見たりと状態を確認した後、「検査の結果も問題無かったですし、明日にも退院して構いませんよ。」と言って、看護師と共に部屋を去った。
「あんな大事故に巻き込まれて、大した怪我が無くて良かった。事故を起こした張本人は、一命こそ取り留めたけども大怪我らしいし。・・・中々意識が戻らなくて心配したけど、これで兄さんにも顔向け出来るよ。」
おじさんと呼ばれた男性は、医者の言葉に安心して稔君に駆け寄って話してたけど、当の本人はなんだか
「父は・・・俺の事なんて何とも思ってません!」
なるほど、お父さんと何らかの確執があるのね。話の内容から察するに彼に無関心なのか、または捨てられた・・・のかな?この辺が彼の性格の原因の1つなのかしら?
それと、おじさんと呼ばれた男性は稔君の実の叔父みたいね。叔父さんは少し悲しそうな顔して「そんな事無いよ」と言っていた。
「さ、疲れているだろう。俺ももう帰るから、今日はゆっくり休みな。明日迎えに来るよ。」
叔父さんはそう言い残して部屋を後にした。
稔君はしばらく考え込んでいたみたいだけど、ふと鞄に手を伸ばし財布を取った。いきなりどうしたのかしら?と思ったんだけど、財布を広げて中から写真を取り出した。
取り出した写真をこっそり覗いたら、20代くらいの男女と女性に抱かれた赤ちゃんが写っていた。
「母さん。。。」
この2人が稔君のご両親なのね?2人とも世話に来なくて、代わりに叔父さんが世話してるなんてなんだか意味深よね。
パサッ
紙切れが財布から落ちた。
あ、、、写真にくっ付いて私のメモが出て来ちゃったわ。感傷に浸ってるとこに出て来るなんて最悪!なんだか申し訳ないわ(汗)
「ん?なんだこれ?」
稔君が紙切れに気付いて拾い上げた。
『契約を断られたのが
他人から奪った寿命ではあるけど、その為に奪った訳じゃないし嘘では無いわよね?
「そう言えば死神とかって・・・夢じゃなかったのか。」
稔君が紙切れに書かれた内容を読み終えると、役目を終えた紙切れは灰になり跡形も無く消えた。
「そっか、俺はほんとはあそこで死んでたのか。この命は与えられた物なんだな。なら、折角生きながらえたんだ。有意義に使わなくちゃな。」
稔君、両手を握りしめて、何か決心したみたい。うん、前向きになってくれて良かったわ。有名になって活躍してくれれば私も嬉しいわ。彼の活躍は私が救ったおかげよーーーー!なんて自慢出来るもの。やだ!ちょっとミーハーだったかしら?
折角手に入れた命なんだから、お父さんとの
お父さんとの問題の行く末を見守れなくて残念だけど、今後の活躍は仕事でこっち来た時にテレビで観れるわよね?
彼の活躍を祈りつつ、私は病室を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます