第1話
動くカゲが止まった。こちらを向いている。僕は、もう一度問いかけてみた。
「あなたは誰?」
それは答えてくれなかった。けれども、ここがどこなのか、そして僕のおかれている状況までも教えてくれた。どうやら僕は、死と生の間を彷徨っている空間に迷い込んでしまったらしい。僕は、覚えてはいないけれど数日前病院に運ばれたって。"生きたい"率直に思ったことはそれだ。あと、カゲがなんで知っているのかも気になったけど、とりあえずどうしたらいいのかわからなかったから聞いてみた。病気?交通事故?通魔に刺された?事件に巻き込まれた?細かい理由までも気になってきた。きっと知らないだろうと思いながらも、もう一度カゲに聞いてみた。
「なんで、病院に運ばれたの?」
カゲは質問を質問で返してきた。
「君の最後の記憶はどこで止まっているんだい?」
「えっと、最後は、あれ、、っ、思い出せない。、何もっっ、、思い出せない。。。、、なんだかっっ、、、呼吸がっっ、、苦しい。っっ、、っ、、、うわっ、、」
眩しい光に包まれ、街が見えた。東京のスクランブル交差点に立っている。いや、浮いている。人々は、僕を通り抜ける。見えていない。あ、あそこに僕がいる。彼女といるみたいだ。楽しそうに会話をしている。その後ろに……通魔がいる。僕は、気づいていない。このままだと刺されそうだ。考えているのも束の間、僕は刺されていた。大きく一回、左の真ん中あたりを背中から刺されている。すぐに、僕は崩れ落ちて倒れてしまっているみたい。彼女はどんな状態か。刺されていない?無事かな?えっ。笑っているの?誰かに電話したいる。きっと救急車を……。そうではなかった。悲しい事実を知ってしまった。通魔に刺されたと見せかけたこれは、彼女によるものだった。刺した男は、きっと彼女の使い手だ。いや、子犬かもしれない。携帯の画面には"puppy1"と書いてあった。しかも、失敗した時ようにナイフに毒まで塗るよう指示していたみたいだ。ただでさえ危険な毒を致死量も、僕の体内に刺し込んだのだ。あまりにも、残酷な光景に僕は、涙を一粒だけ流した。いつの間にか白い空間に戻ってきていた。結局、僕が生きてしまったら、彼女にまた傷つけられるだけだ。それに、僕が証言すれば、彼女自身の罪も重くなってしまう。身体からも、心からも鋭いナイフで僕をまた傷つけるの?そんなのは嫌だ。きっと、彼女だって殺傷してしまったという事実が残れば、心に傷を負う。社会的に抹殺されてしまう。あれこれ考えると「死」の道を選びたくなった。
「辛いよっ。もう生きたくない。」
そう言葉に発した瞬間、身体中に激痛が走った。そして、さっきよりも呼吸は苦しく、胸が痛い。
そうしてカゲは言った。
「そんなこと言っちゃダメだよ。消えちゃうよ。本当にこの世界から消えちゃうよ。だめだよ。こっちに来て。」
僕は、まともに声も出なかったが、話した。
「でも、、、、もう、、、無理だよ。戻ってこられない。。。。一度言葉にしてしまったことは、、、、、。取り消せない。生死を彷徨っている中、本人の意思が弱まれば、きっとすぐ死んでしまうよ。、、、、、、、、、、、、、ごめんね、カゲさん。」
苦しさやら痛みやらどんどん増す。薄れ行く意識の中で、最後に、"そうやって思っていいのは2回だけなんだ"と呟くカゲさんのこえがきこえたきがしたけど、そのまま、この白い空間の床に気づいたら寝るように倒れていた。カゲさんがまだ何か僕に喋りかけている。でも、聞こえない。苦しすぎて言葉が入ってこない。
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