ノアの艦 ~厄女が女神になる日~【第2部連載中】

市來 茉莉

第1部 厄女

0.厄女は守護隊にいる


 航行中、損壊した際に浸水すること防ぎ、バランスを保ち沈没を防ぐ。それが船舶における『ダメージコントロール』。

 損壊修理に消防などを受け持つ、艦の最終守護部隊。ダメコン(DC)部隊。


 剣崎乃愛けんざき・のあが所属する部隊である。

 乃愛の父もまた、ダメコン部隊の隊長であった。……そう、あった。過去のことだ。


 乃愛の父はいま、無職だ。

 職務中に事故に遭い、部下を亡くした。父の責任ではないと査問会、調査会でも結果が出たのに、自分を責めた父は退官した。

 それから父親は腑抜けた日々を送っている。



 その事故に遭遇し殉職者を出した部隊長の娘は、不吉な女として見られるようになった。


 乃愛はいま密かに『厄女わざわいおんな』と囁かれている。

 乃愛自身も知っている。


 それは父のせいなのか?

 それは事故のせいではないのか?

 事故の原因はなんだった?

 父は艦を守った。相棒を亡くしたが守り切った。


 だが人々は囁く。死者を出した男の娘は、やくを呼ぶと――。



 そんなわざわいを呼ぶ女だが、艦の最終守護部隊『ダメコンDC部隊』に所属する。

 父は間違っていないと信じている。

 いつか元の父に戻ってくれると信じている、毎日。

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