第12話

「契約不履行⁈」

マリが坪洗に目を剝いた。

「そう。裕美マリはどうしても中だしさせないってね。

あちらさん、相当お冠だよ」

「でも、それは契約で」

「契約にどう書いてあったかはしらない。でも

あちらさんは違約金を払えっていってきてるんだ」

「違約金」

マリはうわごとのようにその言葉を

つぶやいた。

「いっ、いくらですか」

「10億」

「そんな」

「払わなければ闇のマーケットがお待ちかねみたいだよ」

「闇のマーケット」

マリが初めて聴く言葉だった。

「そう。一度入ったら二度と抜けられない。

裏社会の裏ビデオ制作組織だよ」

坪洗が多少同情の入り混じったような目でマリを見た。

「イヤです、そんな」

マリの口元にやった手は小刻みに

震えている。

「助けてください!坪洗さん」

「そりゃあ、助けてあげたいけどねぇ」

坪洗は乗り気ではないようだ。

「相手がわるいやね。ヘタすりゃあ」

「警察沙汰ですか」

「そんなこって済めばいいけどね。闇のマーケットは

警察官僚とも繋がってるって噂だし、気がついたら

東京湾にコンクリ詰めで浮かんでたなんてのが

マジ冗談じゃないのよ」

「そんな」

マリがガックリと肩を落とした。




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