進路篇
第1話 妖師への道
俺の夢は契約者の一種、「
妖師は、妖怪と対等な立場で契約する異交だ。
その為に俺は、「
集合場所の異沓訓練校のエントランスで、俺は同じクラスの
「あと5分…」
すると、
「おう、
「お前が遅いんだ。後、5分で門閉められちまうだろうが。」
細田が来た。今時珍しい金のリーゼントに
「おう、
「誰?アイツ。」
「さあ?」
鼻より上がオレンジ色の髪に覆われている奴に、偉そうな雰囲気のおっさんが話しかけた。
「
「嗚呼、
このリュウシって奴、学長の知り合いか。何者だ…。
「おい、今、識名学長って…」
「嗚呼…」
細田も気付いているようだ。
周囲に目を見張っていると、時が来た。
外の門がゆっくり、閉じていく音が響き渡る。
「…」
さっき、リュウシに話しかけていた男が俺達の前に現れる。
「おはよう、異交の卵達よ。」
「「「おはようございます!」」」
「私は異交連合本部長の
「…」
「諸君には、その覚悟がありますか。」
見下すような目で三枝が言い放つ。
「今、辞退するなら、五体満足で無事帰宅出来ることを確実に保証します。」
周囲の反応を伺う。冷や汗をかいている奴もいるが、辞退する気はないのか、足を動かす気配は誰一人からも感じない。いや、それともビビって動かせないのか…
「良いんだな…では、君達を異沓生達として、迎え入れよう。改めて、宜しく頼むよ。」
「「「宜しくお願いします!」」」
何か声が裏返ってる奴もいた気がするが、気のせいということにしておこう。
「私の出番はここまでだ。ここから先は、今から配布する資料を基に行動してくれたまえ。それじゃ、未来を担う者達よ。」
そう言うと、三枝は静かに去っていった。
その後、三枝の言う通り資料が配られた。前半は何か精神論だか、何だかについて熱く語っているが、興味はあまり無いから、さっさと飛ばした。スケジュールの
「げっ、6時起床かよ、俺いつも7時半だぞ?」
細田が起床時間を見て嘆く。
「しかも、22時消灯っておいおい。ふざけてんのかよ…」
今の所、細田はスケジュールがかなり気に食わないらしい。あまり気が長いとは言えない細田が耐えかねて、暴れないかが心配だ。
「細田、暴れんなよ?」
俺は細田に釘を刺しておいた。
「なァに、心配すんなって…」
細田は毎回こんなこと言って結局やる。
心配でしかない。
「えーと、102…102…あ、この部屋だ。」
俺達は泊まる部屋を見つけた。
「何で1人1部屋じゃねぇんだよ。」
一々
「とりま、入るぞ。」
「おう。」
扉を開けると、2人の男がいた。名簿は部屋割りの所に書いてあった筈。
あった。
「えーと、浅桐君とぜ、善養寺君?どっちがどっち…?」
「浅桐が僕だよ。」
4つある内の左奥側のベットを占領している眼鏡が言った。
「てことは…」
俺は浅桐の向かいにいるツンツン頭に目を向けた。
善養寺は静かに頷いた。派手な見た目に対して、案外静かな奴なのかもしれない。
「えーと、どっちが…神間…
浅桐が
「俺が神間で、こっちが細田だ。」
「わかった、宜しく頼むよ。」
浅桐は俺達に笑顔をくれた。取り敢えず、細田みたいなのじゃなくて良かった。こんなのが何人もいたら、溜まったモンじゃない。
俺がチラッと細田の方を見ると、勘付いた細田が、
「ん、何だよ?」
「え…いや、何も。」
危ねぇ…
細田は善養寺の隣のベッドをテリトリーにするようだ。俺は余った浅桐の横のベッドに腰かける。
「えーと、神間君達は同じ高校なんだね。」
「ん、
「咬羅高校って、どこにあんの?」
「神奈川。」
「へー。僕、
「ふーん。」
「ぐがぁぁぁああッ!」
「っん?!」
突如響き渡る轟音のする方に目をやると、細田が爆睡してた。今日はまだ何もしないとわかっているからなんだろう。
「…ッ!!」
善養寺が急いで、荷物からイヤホンを取り出して、耳に押し込む。明らかに蔑すんだ目で細田を見る。
「がぁぁぁぁあッ!」
イヤホンを貫通してしまったのか、キレた善養寺は、寝ている細田の背中に蹴りを入れた。
細田の体は床に転がった。
「…」
やべー。こんなんされたら、細田、ガチギレだろ。
「…っぅゎあーー。あぅぁぅん…がッ、ガーーーッアッ!」
「おいおい、マジかよ…。」
細田は寝続けた。
善養寺はイヤホンを耳に入れたまま、スマホを
「細田君、大丈夫なの。アレ…?」
「まあ、寝てるっし、大丈夫っしょ…多分。」
そこから、細田は目を覚ますことなく、何を言ってるかわからない寝言をボヤき続けて、1時間が経った。
「暇だね。」
「そうだな。」
「別に部屋から出てもいいんだよね?」
「多分。確かいける。」
「どうせなら、行ってみない?」
「そだね。」
俺達がこの部屋を去ろうとしているのを察したのか、善養寺がイヤホンを片方外す。
「どこか行くのか?」
「嗚呼、暇だからね。ちょっと出てみようって。」
「そうか、じゃあ、俺も行く。良いか?」
「嗚呼。」
「細田君はいいの?」
「…」
細田から起きる気配は微塵も感じない。
「まあ、起こす方がキレられそうだから、そっとしとこ。」
「本当?」
「じゃ、行くか。」
俺達は細田を部屋に置き去りにして、外へ出た。
「そーいや、善養寺は何志望なの?契約者?役召者?」
「妖師。」
「ふーん、俺と同じだな。え、どこ高?」
「
「へー。」
やっぱ、わからない…。
「あれ、てことは浅桐も妖師志望?」
「そそ。」
「ほーん。」
申し込む時の希望欄に書いたのを基に部屋組みされたのか。
「ようやくだな。」
俺達は外に出た。
「比較的、星とか見えるんだね。」
「まあ、近くにデカいビルも輝くネオン街も無いからな。」
「…あ?」
俺達は先客がいることに気付いた。
「お、久し振りに女子見たわ。」
四人組の女子だった。
「「「「ん?」」」」
向こうも俺達の存在に気が付いたようだ。
女子がいると言えば、寝ぼけた細田も3秒で覚醒するだろう。
「俺達、妖師志望なんだけど…。そっちは?」
「錬術。」
「嗚呼、錬術ね。」
確かに錬術者は前線というよりも、サポーターとしての役割が強く、女子の割合が高い。
四人組は
「OK、僕は、浅ぎ…」
「おい、神間…」
「ん…!?」
振り返ると、殺意200%の細田が立っていた。
「誰を差し置いて、女と喋ってんだ…ゴラァ…」
嗚呼、何で起きてるかなー…。
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