第4話 出会い


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、・・・・・・」


自分の背丈ほどある草をかき分けながら、

勇者は悲鳴がした方へ足を進めていく。


ザッ。


道が開けた場所。

先程、仲間達がたき火を焚いていた場所に勇者は辿りついた。


焼いている途中で火が消えたのだろう、

木の棒に突き刺さった魚は、

生焼けの状態のまま放置されているようだった。


「!メルシー、キッド、どうした?何があった?」


勇者の視線の先、メルシーとキッドが地面にひざをつきながら

ガタガタと震えている。


よっぽど恐い思いをしたのだろう、キッドの瞳には涙が滲んでおり、

まるで、牙を抜かれた狼のようになっていた。


「・・・・・・あれは、何だ?」


勇者が二人の周りをぐるぐると動き回る茶色い何かに近づいていく。


がっ!


その茶色い何かを勇者が素手で掴み、メルシーが悲鳴を上げた。


「いやああああああああああああ!勇者様!

それを早く、私達が見えないところへ放り投げてください~~~!」


勇者はメルシーの言葉を余所に、

まじまじと手に持った茶色い生き物を見つめる。


「・・・・・・・うんこ。いや、形はうんこそのものだが、

こいつは生きてる。こんなモンスターはじめて見た・・・」


「離せっ!!!!!!」


「うんこが喋った!?」


うんこは勇者の手をふりほどき、再度二人に襲いかかろうとする。


「きゃあああああああああああああああああ!」

「あ・・・・い・・・・や・・・・」


メルシーは叫び声を上げ、キッドは言葉にならない嗚咽をもらす。


バン!バン!バン!


突然、鳴り響く銃声音。


その音と共に、キャロラインがうんこの方に近づき、

拳銃を構えた。


先程の音は空砲だったのだろう、弾はどこにも当たっておらず、

うんこは胸を撫で下ろす。


「次は、当てる・・・。私が銃を撃つ前に、ここから立ち去れ」


キャロラインが鋭い目つきでうんこを睨みつけながら言った。


その言葉にうんこが逆上したのか、キャロラインの方に向かって

うんこが攻撃をしかける。


「キャロライン!!!!!!」


ドサッ。


勇者がキャロラインに飛びつき、うんこの攻撃をかわした。


「平気か?傷は?どこか痛いところはないか?」


勇者がキャロライン体を抱きかかえながら、早口で尋ねる。


勇者の腕の中、キャロラインはそっと目を閉じ、

このまま時が止まってほしいと願った。


しかし、その願いはうんこの一言により、あっさりと打ち砕かれる。


「そいつ、お前の妹か?」



ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン。


キャロラインの脳内で絶望の効果音が鳴り響いた。


「いもうと・・・?違う!私は、子供じゃなくて、

ちゃんとした大人だもん!そうでしょ?勇者様!!!」


キャロラインは勇者に顔を近づけながら想い人に同意を求める。


「いや、お前はまだ子供だ。だけど、強さで言えば一番強いから、

そういう意味では大人かもしれないな」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ガクッとうつむき黙り込むキャロラインを見て、勇者が口を開く。


「大丈夫。今はまだ子供でも、そのうち立派な大人の女性になれるさ。

焦る必要はない。俺も皆もお前の成長を見守ってる。

お前はきっと素敵な大人になる、だから気にするな」


「・・・・どうして、わかってくれないの?」


「??」


勇者はキャロラインの言っている言葉の意味がわからないのか、

きょとんとしている。


「・・・・もういい。そこのうんこ!

私についてきて!私が相手になってあげる!」


キャロラインは頬を膨らませながら、崖がある方へと走り去っていった。


メルシーとキッドには目もくれず、

うんこは彼女を追うように駆け足でその場を後にする。


勇者が二人を追いかけようとしたその時、

「待って!勇者様!」

メルシーがすがりつくように勇者の腕を引っ張った。


「・・・・メルシー。キャロラインが危ないんだ。

俺は二人を追わないと・・・・!」


「勇者様。わたくし、何だか嫌な予感がするんです。だから、

どうか行かないで・・・ここにいて下さい」


勇者は首を横に振り、メルシーの手を振りほどきながら答える。


「キッドのこと・・・、頼んだぞ」


勇者は後れを取り戻すよう、駆け足でその場から走り去っていった。







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