理不尽の話

たたたたたたたたた...

軽快軽快....それはもう軽快に、

1台の鋼のポニーが荒地をく。

「しょうねーん...やっぱり運転したい〜!」

「駄々こねても無駄ですよ?このは僕のですから...。」

「お前はいいなぁ大事にされてさ〜でもよ?絶対カットばした方がお前も喜ぶよNow《なぅ》?」

突如、車に話しかける変なヒト...

銀の髪にパステルピンクの瞳の女性...

彼女の名はシュネーと言った。

「誑かしても無っ駄でっすよ〜....」

そして妙にご機嫌な....運転席に座り、

ハンドルと言う手網たづなを引くのは...

黒い髪の華奢な少年...

「....。」「........」「.......。」

少年ルアは旅人だ。

何気にこの車を長距離で運転するのは久々、

少し前の国に行く途中も運転したが...

中々に直ぐ着いてしまったので、

心からウズウズしていたのだ。

こう、運転すると...

タイヤの痛み具合い、エンジンの健康状態...

ありとあらゆる要素を、

シートとステア(ハンドルの事)を通じて、

車が語りかけて来る様である。

「ねぇ〜しょーねーん....」

「ダメですよ〜。」

「じゃあじゃんけん!じゃんけんなら!」

「じゃんけんですかぁ?」

「私が勝ったら偶に運転させてよー」

「偶になら...じゃんけんじゃなくても別に良いんですけど...。」

「じゃあ今!今!」

「げぇっ....。あ〜いいですよ?やってやります...」

「先二勝な?」

「はいはい....」

車を路肩に停めて降りる。

そして....

「さいしょはぐー...じゃんけんp」

ここでルアが....

「いんじゃんほいじゃ無いんですか?」

「いんじゃんってなんじゃ」

「なんか...そう言うんですよ...僕の国。...うーん...そちらに合わせますね...。」

「さいしょはぐーじゃんけんぽい...で....!いくぞ!」

「さっいしょはぐー!じゃんけん....」。」

悪いですが師匠....

普通に勝たせてもらいますよ?

「ポン!」。」

師匠グー....少年パー

「おっやるじゃーん」

「よっし!」

じゃんけん....グー、チョキ、パーの

三択の内から一つ出す。

普通に考えれば全て同じ確立で勝てるから

この何もかもが手の形で決まる

この神の戦いが産まれた....。

だが、それはやはり数学的な...

誤差を無視した所謂いわゆる理論的には、だ。

ヒトが、この手で、試行する事により....

必ず何処かに抜け道は現れる.....。

ルアは知っている....ヒトは0と1...

この二つに優先して動くという事を....

チョキは余程意識していない限り、

その不自然な指の開き故に出し辛い。

ルアは直前に掛け声の違いの話題を出した。

つまり、相手の考えに、

一度リセットをかけたのだ.........

よって直ぐに始まった本番までに、

思考は停止した事で.....チョキ率が低減、

後は相手がグーか、パーか.....

その0と1にかかっている。が、

まだここも油断はしてはいけない.....

ここはパーを出すのだ。

最初はグーをした時点で脳死ならば、

そのままの勢いで相手は、

グーを出しやすくなるであろうし、

もし相手側がパーならば、

こちらもパーを出せばあいこに持ち込める。

あいこはあいこで作戦がある.....が

まだその時ではないだろう....。

二戦目

「さっいしょはぐー!じゃんけん....」。」

「ぽん!」。」

師匠チョキ...少年.....チョキ....

チョキを一度出すと...

グーを握り直すのは面倒臭い。

やってみればわかる。

パーなら残りを開くだけなのに対し...

グーは親指を開き、開いた二本を格納、

そこから親指を閉じて初めて形になる。

あいこで...の掛け声中に、引く時、

一度グーにするルールがあっても....

やはり完全にグーにするのは面倒臭いので...

出しやすいのはやはりパー....

つまりこちらが出すべきはチョキ!!

「ポン!」。」

勝った!と思ったが....

「あれ。」「どうした少年」「いや、なにも。」

師匠が選択したのはグー....。

読みが外れたか....?

面倒臭がりな師匠を至る所で見るゆえ

当たったと確信していたが....。

「おっし!ラスト!」

「さっいしょはぐー!じゃんけん....!」。」

このリトライの早さなら....

最初の技の応用が使えるはずだ....

思考スピードが少ない...つまりは

単純な手を出しやすい状態....

その上、前回の相手の勝ち手はグー。

成功体験はヒトの思考に深く刻み込まれる

刻み込まれたその体験というモノは....

脳死の世界に深く干渉する!!

「ポン!」。」

師匠チョキ...少年....パー....

「あえ?」

「うっしゃーい!わたしのっかち~」

「なんでですか!?絶対勝ったと思ったのに.....。」

「拳読....しってるか?」

「まさか!?」

「出す手をギリまで見てたのさ....開く動き...筋肉の動きを隈なく見て.......そして最速で....私の筋力によるごり押しで!!」

「ずるいじゃないですかそれ」

「そう、ずるい.....だが、負けと認めてしまったのなら....君の負けだ.....。これが理不尽って奴さ...少年が今まで受けた理不尽がどんなレベルなのかは知らないが.....この先もこれからも....理不尽なのが世界さ..........この世の中、理不尽無く生きて行けるのは多分ウィルスだけだ....逆に微塵にも理不尽なく生きているその人は、周りに理不尽をまき散らすウィルスになってしまう恐れだってある.........これだけは覚えておきな?.........んで........やっぱ運転しなくていいわ!ごめんね~じゃんけんしたいだけだったからサ!」

「な、なんですかソレッ!?キレますよ! 僕だって!」

ぷんぷん怒ってるルアの頭を軽く撫で...

「ごめんなさい!」

と頭を下げるシュネー。

「いて」

ルアはその銀の頭を軽~く小突いてやり...

「..........行きますよ!!」

二人はなんだかんだ睦まじい笑顔で

この晴れた荒地を走りだした。

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