柚希
目の前の姉が死んだように眠って、早、三か月。あの雪の日、うちと深雪お姉ちゃんは琴葉お姉ちゃんと話して止めようとした。
十月なかばあたりから、琴葉お姉ちゃんはおかしくなってきた。何かに対する執着を見せ始めた。あの酷い飽き性な琴葉お姉ちゃんが!それから、付き合いが悪くなって、うちや深雪お姉ちゃんに対する目が暗くなって、どこか疲れた顔をしていた気がする。ママはあまり問題視していなかったみたい。でも少なくとも琴葉お姉ちゃんのうちと深雪お姉ちゃんに対する関係は悪くなっていた。
そして、十一月の終わりに夢を見た。うちが琴葉お姉ちゃんに殺される夢だった。うちは、このままだと琴葉お姉ちゃんに殺されると、思って、真っ先に深雪お姉ちゃんに相談した。普通はただの夢だと思うだろうけど、あの時の琴葉お姉ちゃんにはそうしてもおかしくないような何かがあった。
深雪お姉ちゃんはうちの話に「そっか、じゃあそれまでに、お姉ちゃんを説得できるようにしようね。」と言ってくれた。もし、ダメでも一緒に琴葉お姉ちゃんを止めるとも。深雪お姉ちゃんが手伝ってくれるなら、と琴葉お姉ちゃんとの関係を変えようと努力した。夢だと雪の日に殺されたからそれまでにできればよかった。でも、できなかった。
そして、そのままあの雪の日がきた。
琴葉お姉ちゃんは庭で上着も着ずに突っ立っていた。このままでは寒くて琴葉お姉ちゃんが死んでしまう。そのまま死んでしまっても、構わないというような様子だった。急いで琴葉お姉ちゃんを呼んで、否、呼び止め、マフラーを首にかける。本当は上着のほうがいいのかもしれないけど、それだとうちが寒くて死にかねない。
あ、やばい。
琴葉お姉ちゃんがうちのほうをちらりと見たあと、倒れてきた。深雪お姉ちゃんがこっちに走ってくる。うちは琴葉お姉ちゃんを支えようともせず、ただ茫然としていた。
最後に見せた琴葉お姉ちゃんの目が透明で今にも消えてしまいそうだったから。
ぽたぽたと、流れた涙が白いシーツにあの日の雪と同じしみを作る。あの日のことは、うちは深雪お姉ちゃん以外には話していない。ただ私たちが雪遊びをしていたことになっている。
神様、神様、琴葉お姉ちゃんはあまり信じてなかったけど、もしいるのなら、琴葉お姉ちゃんを消えないようにしてください。
そして、琴葉お姉ちゃんとまた話せるようにしてください。
夢の中 神薙 神楽 @kagurakagura
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます