第62話 おっさん、家を手に入れる
その後、クレアさんに案内され……迷宮区域の近くに到着する。
そこには一階に出入り口があり、二階に行く外付け階段がある二階建ての家があった。
茶色い壁が特徴的な外観もレトロな雰囲気で、とても良い感じだ。
「ここが、そのお店ですか?」
「ああ、そうみたいだな。以前の話では、迷宮探索を終えた者達の憩いの場となっていたとか。元A冒険者の店ということで、色々と都合が良かったのだろう。こんなところで飲食店をやる者は少ないが、必要ではある。何より荒くれ者達は暴れても無駄だし、近隣住民も安心するという面でも」
「ああ、そうですよね。なるほど、それで俺に預けると言ってくれたのか」
「そういうことだろう。ソーマ殿なら、誰が暴れても平気だしな」
「はは……できれば暴れないで欲しいですけど」
「ははっ! その通りだな!」
ひとまず、鍵を開けて中に入ると……そこには、今すぐにでも商売を始められるような清潔感と施設があった。
手前側はオープンキッチンになっていて、カウンター席がある。
奥側にはテーブル席がいくつかあり、多分二十人くらいなら入りそうだ。
そしてキッチン側から、一階の住居スペースに移動ができるっぽい。
「……良いですね。これなら、すぐにでも商売が始められそうだ」
「ああ、そうだな。外装も内装も綺麗になってるし、すぐに使えるようにしておいたのだろう」
「これを好きに使って良いんですね……いや、ここは甘えておきますか」
そもそも店を預かっていいのか迷ったが、中身を見ても良い店だ。
これなら、自分でも購入がしたいと思えるほどに。
元々新築より、こういった古い家の方が好きだし。
「ふふ、それが良い。それが、きっとお互いのためになるさ。ああ見えて、ギルドマスターは落ち込んでいたからな。ソーマ殿にでかい借りを作ってしまったと」
「俺はギルドマスターに対しては、そこまで気にしてはいないんですけどね」
「仕方あるまい、少し打算的な面もある。ギルドとしてはソーマ殿と上手くやっていきたいのだろう。だから、これは遠慮なく使って良いと思う」
「……そういうことなら、遠慮なく使わせてもらいますか」
「うむ。それで、どうするのだ?」
「ひとまず、二階を見ますかね」
「ああ、そうしよう」
二階に上がるには、一度玄関を出る必要があるので……。
店を出て、二階の様子を確かめると、そこには扉が三つあった。
「なるほど……部屋が三つって感じですか」
「貰った資料によると、どうやら以前は冒険者に貸し出しをしていたらしい。だから、そのまま住めるということだ。中の施設もキッチン以外は、一通り揃ってはいると」
「まあ、ご飯は一階に行けば良いですからね」
「そういうことだ……しかし、ここは良いな。迷宮にも近いし、ご飯もあるのか」
「あれ? 宿を変えるのですか?」
「い、いや……」
すると、何やら気まずそうに目をそらす。
なんだ? 何か俺で力になれることがあればいいが……。
「やはり、お金の面ですか? 俺たちの為に稼ぎは減っているでしょうし……申し訳ない」
「そ、それは関係ない! 稼ぎ自体は別に……ただ、ああいうことがあったからな。まさか、私みたいのが路地裏で襲われるとは思わなんだ」
「いや、お綺麗ですから」
「……へっ?」
「へっ?」
どういうことだ? この人……自覚ないとか?
いやいや、そんなことはないでしょ。
こんな綺麗だったら、言われ慣れてるはずだし。
「な、何をいうか!」
「い、いや、一般論ですよ? 俺の個人的主観というか……」
「……ソーマ殿は、そう思ってるのか?」
「ええ、それはそうかと」
「そ、そうだったのか……ふふ、決めた。私もここに住む。もちろん、ミレーユも一緒に」
「……え〜!?」
「な、なんだ? ダメだろうか?」
「い、いや、良いですけど」
「なら決まりだな」
そう言い、満面の笑みを浮かべる。
まあ……正直言えば助かるけど。
ソラも懐いているし、防衛的な意味合いでも。
……いや、ある意味でチャンスか。
食事代とかをサービスして、クレアさん達に恩返しをすれば良い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます