第39話 おっさん、試験内容を聞く

 翌日の朝、いつものように起きると……。


「むにゃ……」


「うむ、今日も可愛いな」


 そのサラサラになった髪を撫でる。

 一ヶ月の生活で肉付きも良くなってきて、すっかり美少女といった感じだ。

 これなら、すぐにでもモテモテになってしまうな。


「……いや、まだ早い……って何を言ってるんだ?」


 娘を嫁にやりたくない父親か!

 ……まあ、合ってはいるか。


「まあ、結果的に良かったのかもな」


 昨日受けた提案は、少し迷いはした。

 だが、この子のためにも早く稼げるようにならないとな。

 その後、目を覚ましたソラと共に朝食を食べる。


「ソラ、午前中はギルドに行ってくるからな」


「うんっ! わたしは、何をしようかなぁ」


「では、私とお勉強をしましょうね」


「えぇ〜」


「ダメだぞ、ソラ。きちんと勉強はしないと。それが、ソーマ殿のためになる」


「うぅ……わかりました」


 ミレーユさんは頭も良く、ソラに色々と教えてくれている。

 お金を払おうとしたら、断られてしまった。

 なので、今はお礼になりそうなものを考えている。


「ソラ、しっかり勉強しなさい。それが必要なくても良い。ただ、いざという時に必要になってからでは遅いからな」


「……はいっ」


「よし、良い子だ」


「えへへ」


 頭を撫でると、顔をくしゃっとして笑う。

 先程の『えぇ〜』といい、もうすっかり子供らしさを出すようになってきた。

 個人的には、子供はそれくらいの方がいい。




 ソラをミレーユさんに預けたら、クレアさんとギルドに向かう。


 何やら、クレアさんもついていく必要があるとか。


「どうしてですか?」


「い、嫌か?」


「いえいえ、助かります。ただ、お二人には依頼もあるでしょうし」


 ソラの世話も任せてしまってる部分もあるので、それはずっと気がかりである。

 二人は大丈夫と言っているが……。


「それは気にしないで良い。我々も、少し焦りすぎていたからな。無論、そろそろ行動を開始するから心配しないで良い」


「それなら良かったです」


「今日も、午後から依頼を受けようかと思ってな」


「あっ、そうなんですね」


 それを聞いて安心した。

 じゃあ、今日の午後は仕事を休んでソラと出かけるかな。

 そんな話をしながらギルドに到着すると、すぐにアリスさんに呼ばれる。


「では、私は依頼を受けてくる」


「わかりました、あとで合流しましょう」


 クレアさんと別れ、アリスさんの元に向かう。


「ソーマさん、おはようございます」


「おはようございます」


「さて、昨日ギルドマスターから聞かされだと思いますが、昇級試験を受けるということでよろしいでしょうか?」


「はい、問題ありません」


「了解です。それでは、早速説明をしてまいりますね。といっても、難しいことはありません。D級への昇級試験は、迷宮探索です」


「迷宮探索……」


 そういえば、ここは迷宮都市だったっけ。

 普通の依頼ばかりこなしていたから、すっかり忘れていた。


「はい、そうです。D級から入れるので、そのための試験でもあります」


「あっ、なるほど。合格すれば、そのまま迷宮に入る資格も得ると」


 ふむふむ、中々合理的になっている。

 迷宮か……飲食店をやるためにも、魔法の鞄は欲しいところだ。


「そういうことですね。しかし、まだ実際にはE級のソーマさんです。なので、見届け人兼護衛として先導者の方が付きます……まあ、護衛がいるとは思えませんけど」


「いえいえ、何事も油断が命取りですから。教えて頂けるなら助かります」


「ふふ、本当に謙虚な方ですねー。というわけで、明日からでも大丈夫ですか?」


「ええ、俺の方は構いません」


「それでは決まりですねー。では、明日の午前中から試験を開始するので、ひとまずギルドに来てください」


「わかりました、よろしくお願いします」


 迷宮……確か、一度入ると中々出られないとか。


 そうなると、少し装備を整えておかないと。

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