39. プログレッシヴ・フォーク6選【プログレ】COMUS/MELLOW CANDLE/友川かずきほか

'70年代のプログレ・サウンドを形成した要素として、クラシックやジャズなどとともに、フォークの存在を無視するわけにはいきません。


そこで今回はアシッドフォーク、トラッドフォークなどを含めたプログレ寄りのフォークを取り上げました。


執筆に当たっては、改めて手持ちの音源を漁ったり、フォーク界隈を見渡してみたりしたのですが、最終的には割りと順当な選出に落ち着いてしまいました。



紹介バンド/アーティストと、公式動画をまとめたプレイリストです。目的の公式音源を見付けられなかった曲は、代替措置を取っています。


★プログレッシヴ・フォーク6選【プログレ】

https://www.youtube.com/watch?v=fhAmkEB94fA&list=PL_guDDmuRSVVeM8X0PAdWQOoZHx6pRyvI


COMUS

MELLOW CANDLE

GRYPHON


VASHTI BUNYAN(※)

HOELDERLIN

友川かずき(※※)



※リイシュー盤のボーナストラックを収録しています。

※※冒頭曲のライヴ映像を収録しています。




◆COMUS


男女Vo、バイオリン、フルート、パーカッションが混然一体となって奇怪なおどろおどろしさを演出する異色のバンド。層の厚い英国フォーク勢の中にあって唯一無二の異彩を放つサウンドは必聴。不可分な美と狂気の洪水に酔い痴れよ。


◇まずはこの一枚

『First Utterance』(1971)

https://open.spotify.com/intl-ja/album/4q1Xa0nBB10PPeadZCGvW0?si=siGyuMyJS9a4LphPA7_59g


ジャケ買い不可避なカバーアートの印象を裏切らない狂気渦巻く怒濤の楽曲群。初回は精神を削られながら聴く羽目になります。


ちなみに2nd『To Keep From Crying』(1974)は一転してほのぼの軽快路線にシフトした佳作へと仕上がっています。


その後約40年を隔てた(!)3rd『Out Of The Coma』(2012)では再び初期のテイストを取り戻した良作を届けてくれました。




◆MELLOW CANDLE


MIKE OLDFIELDにも参加のClodagh SimondsとAlison Williamsの女性ツインVo.が主軸のアイリッシュ・フォークロック。時に軽妙、時に情緒的に歌い上げるメロディは非常に高品質で、親しみ易さと深遠さが違和感なく同居しています。


◇まずはこの一枚

『Swaddling Songs』(1972)

https://open.spotify.com/intl-ja/album/3gfslPcJfxjaI6CqpDOprR?si=55841799ab48433c


唯一作。十代の二人が紡ぐ鮮烈かつ深みのある歌声は複雑に絡み合いながら調和し、更なる高次元に到達しています。バックの演奏もハイレベルで聴き応え充分。アルバムとしての完成度も同ジャンルの中では類を見ない水準です。




◆GRYPHON


バロック以前の中世音楽をリスペクトした、コミカルで牧歌的なトラッドフォークとして始まったバンド。3rdからは音楽性がガラリと変化し、普遍的プログレに急接近していきます。全キャリアを通じてバスーンの音色が特徴的です。


◇まずはこの一枚

『Midnight Mushrumps』(1974)

https://open.spotify.com/intl-ja/album/4GRKqxMatxVZqgMTne0UKD?si=h0_47jiNQ8OosVKKPrHEfg


鍵盤の存在感が増しつつも、古楽やトラッドの要素を色濃く残す2nd。19分の表題曲に始まり、後続の小曲群にもこのバンドらしさが詰まっています。


余談ですが、筆者の本音を言わせてもらうと、当テーマにそぐわないため除外した3rd以降こそ、実はGRYPHONの本領という気もします。


とくに5thにして最終作の『Treason』(1977)は、ENGLAND『Gardenshed』(1977)やKESTREL『Kestrel』(1975)と並ぶ'70年代後半UKシンフォの名盤としてぜひオススメです。音源がデジタル化されていないのが唯一の難点ですが……。




◆VASHTI BUNYAN


英国の女性シンガー・ソングライター。1stアルバム発売も、殆ど注目されず引退。しかし残された音源の評価は徐々に高まり、35年後に奇跡の復活。ファンを驚愕&狂喜させました。素朴な弾き語りを軸とした音楽性は一貫しています。



◇まずはこの一枚

『Just Another Diamond Day』(1970)

https://open.spotify.com/intl-ja/album/4KerqbIPBSPn5S2YTKwKys?si=73SSlkMNTECaTAuVK6VXUQ


名盤1st。慎ましくも清々しい歌唱を引き立てる、最小限の味付けがされたアレンジがとても心地良いです。個人的には起床後一番に聴きたくなります。




◆HOELDERLIN


ドイツ産プログレッシヴ・フォーク。最初期からジャズロックのテイストを取り入れ、弦楽・吹奏を問わず使用楽器の種類が多いのも特徴的です。やはり2nd以降は急速にフォーク色が後退するなど、音楽性の変遷は激しいです。


◇まずはこの一枚

『Hölderlins Traum』(1972)

https://open.spotify.com/intl-ja/album/6iLRy1tXA7lCHMLZfRSz90?si=a9dmr0ZgRFCxSZohxW9dfw


HÖLDERLIN名義の1stは女性Vo.参加の唯一作。ドイツ語の響きも独特で味わい深く。特に長尺曲で発揮される構成力の高さにも注目です。




◆友川かずき


荒々しくも繊細な〝生〟(なま/せい)の感情を剥き出しに絶唱する孤高のフォークシンガー。精神性やプレイスタイルはパンク、多種多様な要素が複雑に絡み合う分類不能な音楽性はプログレッシヴと呼ぶに相応しいでしょう。


◇まずはこの一枚

『桜の国の散る中を』(1980)

尺八やバイオリン、鍵盤類が入り乱れる一大絵巻。ラストに配置された10分の表題曲は圧巻の一言。全プログレファン必聴の一曲です。


惜しむらくは、本アルバムを始めデジタル化されている作品が少なく、フィジカルでも入手困難なアルバムが多いことです。


差し当たって氏の独特な世界観に触れてみたいという方は、下記のベスト盤をおすすめします。


『ゴールデン☆ベスト 友川かずき』(2004)

https://open.spotify.com/intl-ja/album/2vvrYNKGNTTguEAZbkjQXF?si=KUJ0oK_dQCyvPFFlkOEC1g


「生きてるって言ってみろ」「歩道橋」「トドを殺すな」などの代表曲が揃った入門に最適の一枚です。ちあきなおみに提供した「夜へ急ぐ人」も収録。




今回は以上となります。


他にフォーク系のプログレでは、以前取り上げたRAGNARÖKやKEBNEKAISEもおすすめです。いずれもスウェーデンのバンドで、今回の6組とはまた違った趣が楽しめると思います。


13. 隠れた秀作プログレ6選【プログレ】ETHOS/OSIRIS/RAGNARÖKなど

https://kakuyomu.jp/works/16817330650571948914/episodes/16817330652636505827


15. 小説連動企画:オマージュ元はこれだ!【プログレ】YEZDA URFA/KEBNEKAISE/U.K.ほか

https://kakuyomu.jp/works/16817330650571948914/episodes/16817330652636505827




さて、月末の新譜紹介を挟んでの次回テーマは、ストレートに『パワーメタル』特集をお送りしたいと考えています。


「またパワメタ……」と思われるかもしれませんが、筆者の大好きなジャンルゆえご容赦くださいませ。取り上げられていないバンドや曲がまだまだあります。同じ趣味の読者様はお楽しみに。

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