恋慕「君に綴る想い」

麻生 凪

1話 叶わぬ賭け

そんな問いを投げたのは、君との絆を増やしたかったぼくの心細さのせいなのでしょうね。

もうこうやって、部屋の窓から外を眺めるのは何回目になるだろうか。眼下には断崖を打つ白の波紋が、紺碧のカンバスに無双の線を描いては、また消える。


……どうかしてるな……


三杯目の紅茶に手を伸ばしながら、自身の不甲斐なさに頭を掻いた。

ノートパソコンには書きかけの小説――

虚しくカーソルが点灯を繰り返している。


……今日は、書けず終いか……


知らずとまたみぎわに目を移すのは、君からの便メールりを待つ儚さからでしょうか。

あの日君に投げた問いの答えは、今頃ボトルメッセージのように、波の上を揺蕩っているのでしょうか。


……それとも……


蒼穹に目をやると、いつのまにやら番いの鴎が、睦まじくランデヴーを楽しんでいた。





あぁ、

分かっているさ……


叶わぬ賭けでもあるまい。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る