ヤンデレエンド

白宮 つき

1ルート「邪魔者」第1話

(俺は無敵だったはずなのに…。なんでこんなことになったんだ⁉︎)


通りすがるだけで女の心を奪う悪魔、そう男子学生から揶揄される男がいる。

九条 秋(くじょう あき)高校1年生。

ワインレッドのさらりとした髪を肩上まで伸ばし、切長の紫色の瞳を持つ甘い顔立ちの男である。

見た目だけでなく、勉強スポーツその他何でもできる彼は、唯一の弱点を除けば完璧である。

揶揄されている時点で察しがつくかもしれないが、この男はクズだ。

その甘いマスクで女をたらし込み、飽きたら捨ててしまうのである。

さらにタチの悪いことに、女達は完全に彼に籠絡されているため誰一人として悪く言うことはなく、むしろ復縁を望むほどのため余計に他の男達との溝は深まっているのであった。


「九条くん!よかったらこれ受け取ってください。」

学校一と言われている美少女からの手作りクッキーを微笑みを浮かべて受け取る。

「ありがとう、美味しそうだね。ありがたくいただくよ。」

(この女、学校一って言われてるけど思ったほどじゃないな。まあ、ほかの女切った後に1回くらい相手しとくか。)

笑顔と裏腹なことを考えていると知る由もない美少女は嬉しそうに頬を染めるのであった。

そんな彼を物陰から見つめる女がいた。

「見つけたよ。今度こそハッピーエンドになろ?あきくん。」


秋が家に帰ると部屋にウサギのぬいぐるみが置いてある。

(誰のだよ、女に家は教えてないはずだが。)

するとぬいぐるみが動き出す。

「おめでと〜ございますぴょん!あなたは選ばれましたぴょ〜ん!なんとなんと美少女達と付き合えるとってもパッピーなゲームの企画だぴょん。いろんなルートを試して、最高のエンディングを手にするぴょん!」

耳を揺らしながら、ハイテンションに話すウサギを前に秋はため息をつく。

「悪戯なら他所でやれ。」

そんな取りつく島もない秋の様子にも構わず、ウサギは話を続ける。

「選ばれたアキくんに拒否権はないぴょん!早速このゲームの世界に行ってみるぴょん!ちなみにぬるゲーだから、みんな既にアキくんが好きだから安心するぴょん〜。」

そう言い残すと秋の視界が一気に暗くなる。

(意識が遠のく…。)


「おーい。あきくんどうしたの?」

目を開けるとくるみ色のふんわりとしたミディアムヘアに、淡いピンク色の瞳のたおやかな肢体を持つ美少女、相原(あいはら) みくるがいた。

(こいつの名前も把握している…。あの変なウサギが言っていたことはどうやら本当らしいな。家が近所で世話焼きの女か、今回はこいつのルートってことだな。早く終わらせようと思っていたが、さすがゲームの世界だ。こっちとは違って女のレベルが高いな。存分に楽しませてもらうか。)

心配そうなこちらを伺うみくるに甘い微笑みを浮かべ話しかける。

「少しぼんやりしていたみたいだ。心配かけたな、みくる。」

「えっ?そんな、私はあきくんが平気ならそれでいいの。」

頬を染めて健気に言い募るみくるに、秋はほくそ笑んだのであった。

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