反魂法師―近未来吉備妖怪譚
飯山直太朗
第一章 黄昏時
第1話 狼と少年
もちろん、自然界の理法を逸脱していることが立証されるようなものは、何一つなかった。―H.P.ラヴクラフト「闇をさまようもの」
「1935年―今からちょうど150年前。アメリカはプロビデンスの小説家、ロバート・ブレイクは死の
白一色の無機質な空間に、若々しくもどこか老成した、少年の声がこだまする。
「お坊ちゃん、この施設は今テロリストの襲撃を受けているんだよ。おじさんとおしゃべりしてる
少年と
中年の男に向かって少年はなおも語り続ける。
「輝けるトラペゾヘドロン―
中年の男は白衣の
「君、そ、それは
「
中年の男は歯を食いしばり、顔を
「何を言ってるんだ君は!そんなものなどこの世にない。ここはオモチャ工場じゃないんだぞ!」
少年は口元に
「あくまで知らぬ存ぜぬですか。ならばお見せしましょう。
巨大な黒い塊が、少年の背後に現れた。それは
◇
昔の人は早起きをするのにも苦労したのだそうだ。目覚まし時計という体外式の器械から流れ出る、けたたましい
【国立
父の勤務する研究所の名前。緋出は己の
「光様の
参会者は皆一斉に立ち上がり、
現代人は疑似的な不死を獲得している。それは彼らの日常生活の万端が体内式の端末によって記録されており、クラウドにアップロードされた「故人」情報をもとに人格が再構成され、バーチャル世界で第二の生を送ることができるからである。このサービスの登場によって人類の死生観は劇的な変容を迫られた。世界中の宗教が科学技術の下に
故人とのアクセスは大幅に制限されるものの、「あの世」で生きているから悲しむことはない、むしろ祝福すべきである―近親の死を初めて経験した今の緋出は、この
やがて母との二人暮らしが始まった。研究所を襲撃し父を殺害した犯行集団の行方は一向に
「ヒデ、今から開けるわよ。」
緋出の母、
「ないわねぇ……」
「ないって何が?この部屋は我が家で一番、モノに
父は西暦二千年前後に製造された
「決まってるじゃない。フィジカル・エロ本よ。」
「母さん、やめようよ……。父さんの
「あら。お父さんの好みが分かれば、バーチャル
細長い木箱が、棚と棚との間の僅かな隙間に立てかけられていた。緋出はその
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