俺は賢者じゃない!【連載、各話短編1話完結】
星進次
第1話 俺は賢者じゃない!
「俺は賢者じゃない!」
魔王を前にして何を言ってるんだか?
勇者も竜騎士も戦士も、沈黙している。
今から半年前、俺は一つのパーティに加わった。
勇者の血を引くものと、竜騎士と戦士のパーティだ。
仲間の魔法使いが死んで、復活に失敗したらしい。
一度蘇生から時間が経ってしまうと、肉が腐り呪いを帯びてアンデットになってしまう。
その為、次は僧侶か賢者を探していたらしい。
そんな時に俺はスカウトされた。
それから俺は頑張った。
仲間の傷を癒やし、街中をみんなと歩き、こうして魔王の元まで来た。
何?街中をみんなと歩くのが当然だって?
街中なんて歩くのも大変なんだ。
そして、今魔王と対峙している。
魔王は魔法を使った。
俺が風と土と水と回復魔法が得意だということは、部下から聞いているだろう。
周囲に回復をできなくする魔法、風、土、水の威力を下げる魔法を展開する。
魔王の攻撃が勇者を貫く、続いて竜騎士と、戦士の体を貫く
だが、彼らは魔王の体を貫いた。
彼らが貫く?
と思うかもしれない。
そう確かに貫いたのだ。
「まさか?どういうことだ!?賢者の力が超再生と不死身の力を与えているというのか?
それほどまでの賢者!」
魔王は死に際に語る。
「俺は賢者じゃない」
そう俺は賢者じゃない。
地面を温めて風を起こし
空気を温めて霧を発生させ
地面の中を爆発させ、土の壁や散弾を作りだしたただの火の魔法使いだ。
だが、流石に回復はできない。
仲間が傷つけば、傷口を焼いてポーションをかける。
これを同時にやるとあたかも回復したように見える。
しかも、複数ある火の魔法でも最初の魔法を圧力を変えて使っているだけだ。
いわゆる先程のは、炎魔法ではない、火魔法だ である。
それを今の勇者と行けば食いぶちに困らないだろう程度でパーティに加わり、賢者だと偽った。
だが、そんなことは普通バレるだろう。
だが、幸いにも勇者も竜騎士も戦士も死んだ。
復活魔法なんて唱えられないところで思いついたのが、火を人間の形にして歩かせてみようである。
炎色反応を上手く使い色を付け、街中を歩いた。
だから、今、魔王が貫いたのは勇者ではなく、高圧力の火でしかない。
それが、魔王に向かって行き、体ごと体当たりをしたのだ。
さて、魔王を倒してしまったがどうしよう。
勇者たちが実は死んでしまいましたでも、賢者は何をしていたという話になるだろうか?
それなら、魔王を作り出して、魔王軍を操り世界でも征服するか。
高らかに笑いながら、魔王に語った瞬間、魔王の体が霧散し、炎が俺の体を貫く。
まさか、俺と同じ考えを持つものがいたとはな。
俺は先代の勇者パーティの賢者だ。
残念だが、そのアイデアは私がイノベーターでね。
君は二番目でしかないのだよ。
まさか。。。
薄れゆく意識の中で賢者の高らかな笑い声が聞こえた。
流石賢者だ。
俺くらいが考えるアイデアなんて、既に誰かがやってるのだな。
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