第七話 問題ありません!それが王女たるわたくしの役目ですから!
イサミとケイネスが食事を終え部屋をでるとアステリア王女がウキウキした声で言った。
「あの、これからお城を探検しませんか?」
「え、案内の間違いじゃないですか?」
城の持ち主にも関わらず奇妙な言い方にイサミは聞き返す。
「ああ、そうでした。ご案内しましょうか?」
アステリア王女は訂正して聞き直した。
イサミはケイネスと共にこの王女は大丈夫なのかと首を傾げたくなる。
歩きながらイサミはちょうどいいタイミングだとゆっくり問うた。実際今も聞き辛い話だ。
「えっと、さっきは聞きづらかったんだけどー、お姫様は大丈夫なんすか?俺なんかとつか、伝説にあった勇者名乗った上に、親に言われたからて結婚して」
「問題ありません!それが王女たるわたくしの役目ですから!」
アステリア王女は迷いなく答える。
「そう…………」
イサミは短く返事する。彼のいる貴族の家や王族も同様に縁談で親に言われた通りの相手と結婚するなどよくあることだ。
それは分かっている。だがそれでもイサミは釈然としなかった。何か妙な感覚である。
料理や衣服同様十数年生きようとイサミには貴族や王族らしいものは何一つ合わないのだ。
イサミはそのことに疑問を持ち始めた。
その育ちに合わない性質が出す答えは役目だからと自分の意志やら感情を投げて闇雲に従う輩は気に食わないということだ。
気取らない性格なのは悪くないと感じている。だが本質的にアステリア王女を信用しなくなった。
「どうか、しましたしか?」
苦い顔をするイサミにアステリア王女は首を傾けた。
「別に。ただ、やっぱ俺らてそういう生き方してますねって」
「下々の人達を救うためですからね」
自嘲気味なイサミにアステリア王女は拳を掲げる。
「そうじゃなくて、結婚ですよ結婚!人生の墓場なんて言われてる結婚を親に言われるまま結婚しなくちゃなんないて話ですよ!俺らの意志はどこにあるんですか!」
話が噛み合ないためイサミはまくしたてるように言った。
「勇者様は、わたしのこと、嫌いなんですか?」
その言いようにアステリア王女は涙目になってしまう。
「君、モテたいと言いながら殿下を泣かすとはどういう了見だい?」
ケイネスは不機嫌になってしまう。
「違う違う!嫌いとか、そういう意味じゃなくて!もちろんお姫様のことは好きですし超可愛いし結婚できるなんて嬉しすぎて天に昇るていうか現実じゃないみたいっていうか…………」
イサミは手を横に振りながら言い訳じみた言い方をし言葉に詰まってしまう。
「現実じゃないみたいだなんてそんな……………」
アステリア王女は思わず顔を赤らめ頬に手を当てる。
「会って一日で惚気だすとは…………」
ケイネスは今度は呆れてしまう。
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