君が導く未来の君
みるく
ープロローグー
「俺、貴方が好きです。付き合って下さい」
夕暮れ時の教室。
校庭では運動部達の元気な声が響いている。
ベタなシーンにベタなセリフを述べ、俺は真っ直ぐに彼女を見つめる。
産まれてこの方16年と7ヶ月、誰かに告白をするというのは初めての経験だ。
緊張、不安、希望―――、様々な感情が混濁している。
しかし、不思議と呼吸は落ち着いていて。
「…………………」
沈黙が続く。
肩にかかる程の茶髪、瞳はくっきりとしており、容姿端麗な彼女、"姫咲 桜"は驚いた様だったが後に真剣な眼差しへと変わった。
深呼吸をし、改めて俺と視線を合わせる。
「……天木乃君、ありがとう。1日だけ……、1日だけ待って貰えないですか?明日、必ず返事をします」
数分間の沈黙を破った彼女の言葉は、しっかりと俺に届いた。
本当は今すぐにでも告白の返事を聞きたい所ではあるが、本人がそう言うのならば仕方が無い。
望みを失った訳では無いのだ。
「…………了解。ごめんね、時間取らせて。んじゃ、俺は帰るよ」
そう言ってリュックを持ち上げ、教室を後にしようとした俺に。
「あ、あの……!!」
その声に俺は振り返った。
まだ、彼女は先程の位置から動いていない。
「……ううん、やっぱ何でも無い。気をつけてね!また明日!」
彼女は微笑んでくれた。
俺はその笑顔が大好きで、愛おしくて。
だから気持ちを伝えたのだと、改めて思う。
後悔は無い。
――――――しかし、気の所為だろうか。
彼女の眩しい程の笑顔が、どこか歪んでいて。
悲しそうで。
泣きそうで。
そんな、暗い顔を隠している様な気がしたのは。
………いや、気の所為だろう。
考え過ぎだ。
また明日、と返事をして俺は今度こそ教室を後にした。
翌朝の事だ。
――――彼女が自殺したと俺に連絡が入ったのは。
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